シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
――よいか、身体の筋肉は過度の荷重には物理的限界がある。自らの気を体内に巡らせ、瞬発的な強度をあげよ。外に向かう外気功が出来たのなら、内に向かう内気功も出来るはずだ。それを呼吸で発動出来るようになるまで、鍛錬せよ。
出来た時、これで俺…死が遠のいたと思ったけれど、逆にもっと死に近い修業ばかりさせられたような気もする。
――生き延びる秘訣は、内気功の出来だ。出来ねば…運が良くて、生涯寝たきりだ。
……俺、よく元気に生きてるよな。
「いけねえ、戻らなきゃ!!!」
偶然だけれど…中々良い処に落ちたと思う。
終わったら、すぐ引き返すべし。
此処と櫂の居る場所は然程離れていねえ。
櫂に向かって大きく手を振れば、マメに見える櫂も手を振ってるのが見えた。
よし、こんなペースで俺は終わった。
櫂がどう判断するかだな。
そして
『←出口はこちら』
それにそって走れば――
「うわっ…なんだここ…」
緑の中庭は変らねえけれど…処処に赤い薔薇が巻き付いて。
そこから…ひょこりと何かが見えた。
何だ…あれ?
その時、朱貴のアナウンスがかかったんだ。
『白兎を禁ず。
白兎以外を50匹攻撃せよ』
白兎?
そして出て来たのは…
「は!!!?」
小さい玲。
玲のミニチュア版で、あどけない顔をして可愛いけれど。
頭には白くて長い兎の耳。
尻には…
「何で…ふさふさ尻尾?
これ…リスの尻尾じゃねえか!!」
チビ玲は赤い服を着て、斜めがけしてるでかい懐中時計を持ちながら…
「あ~僕忙しい、忙しい!!! "白兎"は…忙しくて大変だ」
ぽてぽてぽてぽて。
俺の前を横切った。
………。
「ホントホント、何で僕だけ忙しいんだろ」
ぽてぽてぽてぽて。
今度は違う処からチビ玲。
………。
「あ~忙しい。あっちもこっちも、僕だけ何で忙しいんだろ…」
ぽてぽてぽてぽて。
またまた違う処からチビ玲。
………。
「とにかく…進むか…」
そんな時、
ぐがーーっ。
凄いいびきの音。
何だ?
振り返れば…何かが座ったまま俯せになって、身体を丸めるようにして寝ているが、時折そろりと顔を上げて俺の動向を窺っている。
俺と目が合うと慌てて小さく丸まる。
それはどう見ても…
「桜…!!?
お前、どうしたよ?」
小さい桜。
チビ桜だ。
頭には…
「桜、ミッキーの耳つけてどうし「あ~眠いな。ああこの"眠りネズミ"は眠くて仕方がないや」
わざとらしいくらいに俺の言葉遮り、地味に自己紹介してねえか、お前。
尻には…ちょろっと細い尻尾らしきものがついている。