シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「ん……」


やけに扇情的な声を漏らしながら、静かに目を開いて、覚醒した芹霞。


そして気づく。

頭上に――


「ニァン…?」


怯えたようにふるふる震える芹霞の頭には…ふさふさの白い耳。

ひくひく動いている。


やべ…もろヒット。


そして白いふさふさの尻尾がゆっくりと持ち上がり、くねくねと俺に絡みつくように動いて、俺の太股をさすり始めた。


「ニャアアアン…」


甘えたようなその声に、俺の理性は揺らいで、喉の奥がひりひりとして乾いてくる。


抑えていた渇望が、欲となって口から出て来そうだ。


しかしぶんぶんと頭を振って。


「これは幻だ。芹霞じゃねえ…!!」


小猿が煩悩に気をつけろと言っていたじゃねえか。


煩悩。

俺の煩悩。


鎮まれ。


ネコ耳芹霞は…俺の妄想の生き物だ。

そんな俺の耳に息を吹き掛け、芹霞は妖艶に笑った。


どくん。


くっそ…離れろ。

魔性の芹霞を、突き放せ。


欲を鎮め、芹霞を離そうとした瞬間…


「!!!!」


芹霞は、俺の唇を舌で舐めたんだ。


「ん……」


処処に漏れ聞こえる甘いその声は、過去の芹霞とのキスを思い出させて。

紅潮したその顔と、とろりとしたその目に…深い深いキスの、めくるめくあの一時の快感を呼び覚ました。


俺の……芹霞…。

俺の……。


芹霞は俺の首に両手を回し、ぺろぺろと俺の唇を舐める。


陶酔したようなその顔。

赤い唇から…蠢いて卑猥に動く…濡れた舌先。


やばい。

俺、やばいって。


どんなに顕在意識が拒絶しようとしても、欲で膨らんだ潜在意識は主張する。


"芹霞が…欲しい…"


それは…俺がずっと殺していた欲求であったから。

どうしようもなく欲が刺激され、頭の中が芹霞で一杯になって。


もう…駄目だ。

我慢が限界だ。


俺は…芹霞が…


「好きだ…」


そう、好きなんだよ、俺は。

身体より何より…

お前に…求められたいんだ。


求めてくれるのなら、俺は…!!!


俺は芹霞を強く抱きしめ、


魅惑的なその唇を――



ピーッッ!!!



その笛の音に驚いた俺は、顔を上げた。

何かが集団で近付いてくる。


何だ?

一体…何だ!!?


整然とした、不穏な足音。


そして現われたのは――



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