シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「遠坂!!?」
遠坂由香、間違いなくあの顔で。
「不埒なワンコを成敗せよッッ!!!」
1人じゃねえ。
どれもこれもが遠坂の顔をして、頭には赤いベレー帽。
9人いる。
「トランプ…!!?」
そんな遠坂の身体の裏表に、大きな発泡スチロールで出来たハートのトランプ。
J、Q、Kの絵柄以外の数札だが、Aだけはいねえ。
ざっと見、それ以外の数は揃っているようだ。
手にしているのは大きな銃。
遠坂には不似合いな…
「何でH&K PSG1よ!!!?」
H&K PSG1。
特殊部隊に配備されているセミオートマチックの狙撃銃。
どう見ても…兵隊だ。
嫌な予感がする…。
「配置につけッッ!!!」
そして奴らは銃を構えて。
「待て待て待て、狙うな、こんな狭い場所で!!!」
「ニャアアアン…」
置いて行くなとネコ耳芹霞が俺に縋る。
だめだ、この緋狭姉直伝の悪魔の上目遣い。
こんな時に…
うるうるして、俺を誘うなよ!!!
俺は…芹霞を両腕に抱えて、飛ぶ。
バンバンバンバンッッ!!!
どう見ても…実弾じゃねえかよ!!
身を捻りながら、何とか銃弾をかわしていく俺。
「遠坂、やめろって!!!!」
「イケ~ッッ!!!」
バンバンバンバンッッ!!!
ここは逃げた方がよさそうだ。
「発情ワンコを追え~ッッ!!!」
一斉に追いかけてくる。
バンバンバンバンッッ!!!
銃を発射しながら。
「何だあれ…」
遠坂いつから特殊部隊所属よ?
「ニャアアアアン…」
俺の首筋に…芹霞がゴロゴロとすり寄ってきた。
くらり。
芹霞の半開きの唇から、見え隠れしている舌に…理性が…。
これは…芹霞じゃねえのに。
俺、この芹霞…手放せられねえよ。
何で…ネコ耳と尻尾よ。
何で俺を誘惑してくるよ。
「ニァァン?」
ちゅ。
俺の鎖骨の処に、芹霞が吸い付いた。
ああ、やばい。
触れたい。
抱きたい。
芹霞の…禁断症状が…くっそ…!!!