シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「いたぞ、あそこだ。
イケイケイケッッ!!!」
こんな時に、"イケイケ"煩えよ、遠坂!!!
ブレーキが壊れかけた男の気持ち、判ってみろっつーんだ!!!
喉がからから渇いてきて、潤いたくて仕方がねえ。
「ニャアアアアン…」
俺の首…舐めてくるなよ、ネコ耳芹霞!!!
潤いたい場所はもっと奥だ!!!
状況理解しろよ!!
後で…後でたっぷりさせてやるから!!
欲と理性の狭間で、俺は逃げる。
バンバンバンバンッッ!!!
「くっそ…行き止まり!!!」
バンバンバンバンッッ!!!
「よし、仕留めてやるぞ。
全員、イケッッ!!!」
このままじゃ…ネコ耳芹霞が巻き添え食らう。
幻でも本物でも、それだけは嫌だ。
俺は芹霞を傷つけたくねえ。
その時、目に入ったのは…大きな段ボール箱。
異質な雰囲気はあったけれど。
「芹霞…ここに隠れてろ」
「ニャアアアン、ニャアアアン」
芹霞が嫌がっていやいやと首を振る。
「ちょっとだけの間だから!!」
俺は強制的に芹霞を箱に入れた。
「ニャアアアン、ニャアアアン!!!」
悲痛な声を上げた芹霞。
そして。
「……!!!?」
そのまま――
段ボールの中で、消えて行ったんだ。
「芹霞、芹霞!!!?」
「よし、皆帰るぞ!!!」
遠坂達は…突然俺に背を向けて帰り出す。
何だ?
一体何なんだ!!?
よく見れば、段ボール箱の側面に紙が貼ってある。
『発情ネコ捨て場』
偶然とはいえ――
この段ボールに入れたのが正解だった…とか?
遠坂達は、さながら俺の理性のようなものか。
きっと俺が発情芹霞に惑う限り、遠坂達は俺を攻撃してきて。
俺が発情芹霞を切り捨てれば、遠坂達は引くような気がする。
それは直感。
だけど。
「芹霞が発情してたのなら…遠坂から逃げるんじゃなくて、俺もどっかの茂みで発情すればよかった。くっそ~勿体ねえ!!!」
嘆いた俺は、空に吼えた。