シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「あれ? もう行くの?」
「いい時間で煌がやり終えたからな。出来るだけ連続正解してブロックの重さを減じる。出来れば筆記は全部終わらせたい」
あれだけの山は、あと僅かになった。
煌に持たせた問題の解答は、翠とレイ、煌に任せたものを半分以上混ぜた。
やはり、彼らの解答は通用するらしい。
知識とは言い難い発想だけれど、先入観を持ち破る"変化"となりえるか。
「そうだよね。1人では大変だったけれど、皆でやれば早いよね」
「そうだよ、何て言っても僕がいるんだからね!!」
またぽんと…そらした胸を小さい手で叩いたようだ。
まあ…やる気があるのはいいことだ。
「翠…溜まっているそれを寄越せ。代わりに俺のを置いて行く」
「え…確かめすらしてないのに? 紫堂櫂やったのは…正解じゃないか」
特別難しく思った問題はなかったから、上手く行けばそうなりえるだろう。
「………。迷宮とやらを抜けるのに、どれ程の時間がかかるか…試したい。確かめられるのは、今の内だから」
俺がテトリスに参戦して戻るまでの間、煌がスタートするというのなら。
俺の確認が出来ない解答は、全問正解とは限らない。
だとしたら、時間に余裕がある今、不正解の迷宮を経験すれば、今後の対策を立てられるのではと思ったんだ。
翠は複雑そうな顔をして、レイの分も寄越した。
「いいか、紫堂櫂。煩悩に負けるなよ。決して、青と赤の奴を出すな。もし出たら…引き返してもいいから逃げろ」
「引き返せるのか? 入口に…」
「ああ、それはいいらしい。な、ニノ」
『お答えします、サル。入口に引き返すのはOKです。ですが未回答問題が残っている限りは、1問でも解答を持って採点して下さい』
翠が取出したのは翠のiPhone。
俺のと同様な機能は作動しているらしい。
同情報を共有…同期でもしているのか。
「ニノ、2電話間での連絡は可能か」
『お答えします、櫂様。可能です。通話は自由ですが私を呼び出す際には、"同時"だけはお止め下さい』
「何故だ?」
『お答えします、櫂様。混乱して大変だからです』
「………」
俺はiPhoneを眺めた。
まあ…深くを詮索するのはやめておこう。
「翠、煌が帰ってきたら、電話に出ろと伝えてくれ」
そして俺は、解答を持って扉に走る。
『解答を入れてニャー』
………。
不可解な存在の影を主張する、不自然な場所に立ってあるポストに解答を入れると、突如ほのぼのとした音楽がかかってきた。