シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「俺の幸福は――
芹霞…お前という存在だ」
――死んじゃ嫌だああああ!!!
「仮にも…芹霞の存在を模倣しているのなら。俺を"夢"に誘導するな。
俺は――
惑うのではなく、
現実のお前を手に入れる為に、
強くなる為に、此処に居る。
――偽りは、消えろッッ!!」
目の前で消えていく芹霞。
『お知らせします、櫂様。10秒経過しました』
『1つ』
ニノの告知と共に、朱貴のアナウンスがかかった。
何て長い10秒だ。
危惧があった。
もし自分の感覚と、実際の時間進行に齟齬があったらと。
やはり――
俺の時間感覚は狂っている。
矯正していかないといけない。
時間は、ゲームの要だ。
「カイ~!!」
「ふふふ、カイがだあい好き」
そして出て来る、小さい芹霞。
1人ではなく、次々に現われる。
何が現実で何が記憶か。
散々試されてきたんだ。
惑うな。
心を強くしろ。
「カイ、虐めないで…」
「カイ、ぎゅうしよう?」
「うふふ。カイちゅう?」
恐らく…この1つ1つが俺の心の中にある芹霞の像。
俺の中の芹霞は、夥(おびただ)しく存在する。
当然だ。
俺は…芹霞しか見つめてこなかった。
芹霞以外の女は必要なかった。
俺の中の芹霞は、無限にいることだろう。
『11』
『24』
手刀で芹霞を鎮めるのは忍びがたいけれど、現実の芹霞に行き着くには仕方が無いんだ。
『64』
『79』
心を切り換えろ。
最後の1人だったんだ、
目の前の芹霞で。
「痛いっ…」
逃げる1人の芹霞が転倒して、抱え込んだ膝から血を流していた。
それを見た俺は、攻撃を躊躇った。