シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「痛い…カイ、痛い…」
上目遣いで俺を見て、ぽろぽろと泣き出す芹霞。
「カイ…抱っこ…。痛くて歩けないの…」
そう手を伸して来て。
「カイ…大好きなの。
あたしを消さないで…?」
――紫堂櫂を愛してる!!
だから俺は――
ダッダッダーダッダダーダッダダー♪
思わず芹霞を抱き上げた時、ダースベイダーのBGMが鳴り響く。
はっとした。
翠が言っていなかったか?
――ダースベイダーとターミネーター…だっけ? "約束の地(カナン)"のゲーム後に出て来たあの音楽に乗せて、青い奴と赤い奴が出て来たら。
何かがこちらに動いてきている気がする。
ダッダッダーダッダダーダッダダー♪
鳴り響く音楽。
『お知らせします、櫂様。20秒を経過しました』
――いいか、そうしたら逃げることだけ考えろよ?
――目茶苦茶強い上に…残虐だから。
来る。
奴が。
ごくりを唾を飲み込んだ時、目の前の茂みが揺れて。
壁の生け垣などを無視した形で、現われた。
青い甲冑姿の――
「久々だな、『気高き獅子』…」
酷薄モードな、氷皇が。
見(まみ)えたときは、既に戦闘態勢に入っていた氷皇。
俺は、緊張感と警戒心に気を昂ぶらせる。
やばい。
そう思った。
このモードの氷皇は…やばい。
本能が警告を発する。
逃げろ、と。
空気が動く。
そう思った時、一瞬にして間合いを詰められていた俺は、芹霞を片手に抱きながら、咄嗟に防御の姿勢をとる。
ガツンッッ。
氷皇の足と腕がぶつかり、俺の腕がぶるぶると震えた。
横に弾けば…一気にたたみ込まれ、芹霞に被害が及ぶ。
そう思えばこそ、真っ正面にてその力を受け止めることを選んだ俺。
「くっ!!!」
骨が軋む程の衝撃。
「はっ!!」
そのまま腕から外気功を発して、氷皇の足を弾いた瞬間、その足元に潜り込んだ俺は、片手を地面に付いて、低い体勢から足で横腹への反撃を試みたが、既にその位置には氷皇はおらず。
背を取られたことに気づいた俺は、そのまま横転して…紙一重で更なる足の猛追から身を守る。