シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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「裏世界、か…。
あいつが…行くべき処ではないのに…」
私が話終わった後、哀切込めた言葉を漏らし、玲様は僅かに目を伏せられた。
「あいつは――
煌と行ったのか…」
私は、心に共鳴を感じた。
玲様も…櫂様と共に行きたかったのだろう。
櫂様に、選ばれたかったのだろう。
櫂様を心酔しているのは玲様も同じ。
「僕だけ…こんな安穏とした場所に居て。
僕が…櫂を追い詰めた張本人のクセして。
僕には――
失うものがないとは…」
そう、芹霞さんを見つめられる。
芹霞さんは眩しい光に少し身動ぎされ、そしてまた寝息をたてた。
「だけど――
それでも芹霞を失いたくないと思う僕は…
彼女が危険な目に遭わず、僕の元に居るのが嬉しいだなんて…何愚かなことを考えてしまってるんだろうね…」
玲様は、翳った顔で…自嘲気に笑われた。
「玲様の元なら安心だと…そう判断された結果です」
そう。
だからこそ、久遠も櫂様も…芹霞さんを"約束の地(カナン)"の爆発に巻き込もうとはしなかった。
玲様と共に…逃がそうとしたんだ。
玲様に芹霞さんを託されたのだ。
「安心、か……。
こんな僕なのにね…」
苦渋に満ちた端麗な顔。
玲様は…壁に寄りかかるようにして、そのまま目を閉じられた。
鳶色の髪が光に照らされる。
幻想的に光が踊り、私は思わず目を細めた。
端麗なその姿は、光の元で輝いているのに…
その心は闇に彷徨(さまよ)っているように思えた。
やはり、櫂様でなければ…
玲様の憂いを解けないのだろうか。
私からの言葉では…無理なのだろうか。
「ん……」
その時芹霞さんが目覚められ、むくりと上半身を起こすと、眠そうに手で目を擦った。
「まだ…寝ていていいよ?」
芹霞さんに向けるその一瞬、玲様の顔は穏やかになる。
玲様の心の拠り所としているのが判る。
もし芹霞さんが玲様を選ばず、そして今も一緒に居なければ…玲様の心はどうなっていただろうか。
かろうじて"自分"を保たれているのは、芹霞さんの存在故だろう。
私の存在じゃない。
「裏世界、か…。
あいつが…行くべき処ではないのに…」
私が話終わった後、哀切込めた言葉を漏らし、玲様は僅かに目を伏せられた。
「あいつは――
煌と行ったのか…」
私は、心に共鳴を感じた。
玲様も…櫂様と共に行きたかったのだろう。
櫂様に、選ばれたかったのだろう。
櫂様を心酔しているのは玲様も同じ。
「僕だけ…こんな安穏とした場所に居て。
僕が…櫂を追い詰めた張本人のクセして。
僕には――
失うものがないとは…」
そう、芹霞さんを見つめられる。
芹霞さんは眩しい光に少し身動ぎされ、そしてまた寝息をたてた。
「だけど――
それでも芹霞を失いたくないと思う僕は…
彼女が危険な目に遭わず、僕の元に居るのが嬉しいだなんて…何愚かなことを考えてしまってるんだろうね…」
玲様は、翳った顔で…自嘲気に笑われた。
「玲様の元なら安心だと…そう判断された結果です」
そう。
だからこそ、久遠も櫂様も…芹霞さんを"約束の地(カナン)"の爆発に巻き込もうとはしなかった。
玲様と共に…逃がそうとしたんだ。
玲様に芹霞さんを託されたのだ。
「安心、か……。
こんな僕なのにね…」
苦渋に満ちた端麗な顔。
玲様は…壁に寄りかかるようにして、そのまま目を閉じられた。
鳶色の髪が光に照らされる。
幻想的に光が踊り、私は思わず目を細めた。
端麗なその姿は、光の元で輝いているのに…
その心は闇に彷徨(さまよ)っているように思えた。
やはり、櫂様でなければ…
玲様の憂いを解けないのだろうか。
私からの言葉では…無理なのだろうか。
「ん……」
その時芹霞さんが目覚められ、むくりと上半身を起こすと、眠そうに手で目を擦った。
「まだ…寝ていていいよ?」
芹霞さんに向けるその一瞬、玲様の顔は穏やかになる。
玲様の心の拠り所としているのが判る。
もし芹霞さんが玲様を選ばず、そして今も一緒に居なければ…玲様の心はどうなっていただろうか。
かろうじて"自分"を保たれているのは、芹霞さんの存在故だろう。
私の存在じゃない。