シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
外科的処置が必要なんだろうか。
かつて"約束の地(カナン)"で暫定的な処置はしたけれど、あの時とは種も規模も違う。傷ではなく、心臓自体に異常があれば、簡易処置などではすまされない。悪くて移植し直しになる。
そんな煩雑な思考に焦っている最中も、芹霞の肉体は更に悪化のチアノーゼ症状まで現われて。
僕の力は擦抜ける。
僕の想いは届かない。
どうすれば芹霞を助けられる!!?
どうすれば、どうすれば!!?
その時、部屋に入ってきたのは、伸びたクオンを逆さづりに手にした朱貴。
神の使いだと思った。
ああ――…
今はただ、その慈愛溢れる服の色に取り縋るしか出来なくて。
朱貴なら。
紫茉ちゃんを守り続ける朱貴なら。
何か解決策があるのではないか。
そして言われたんだ。
ジキヨクナール…。
僕や紫茉ちゃんを劇的に回復させる薬は、芹霞には無効なんだと。
逆に悪影響を及ぼすものだと、言わんばかりのその声に…僕の全身から血が引いた。
あれは市販されていた薬でもある。
だから…鎮痛効果もあるはずなのに。
少なくとも僕の心臓には効いたのに。
朱貴は言った。
効く者と効かぬ者がいると。
どうして芹霞は効かないんだ?
どうして僕や紫茉ちゃんは効くんだ?
そんな疑問よりも、僕は只芹霞を救いたくて仕方が無くて。
――俺も回復結界を張ってやる。
朱貴の力が部屋に拡がった。
朱貴の力の片鱗は目にはしているが、その力の幅はあまりに大きく。
僕の結界力とは比べ物にならない程で。
緋狭さんを思いだした。
伊達に紅皇を名乗っているわけではないということか。
――怪我人が多すぎるな。仕方が無い、俺の領域に行く。
今はその力の大きさに祈るしかなくて。