シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
選ばれているのは僕ではなく…櫂だ。
それは…芹霞に?
――紫堂櫂を愛してる!!
芹霞が求めているのは…櫂だけなの?
僕は…必要ないの?
考えれば際限ないけれど。
「身体が吹き飛べば、お前は確実に…終わりだぞ?」
それでもいいと言おうとした時、芹霞の言葉が思い出された。
――か、彼女サンを残して…逝かにゃいでくだしゃい。
僕と、生ある関係を望んでくれる芹霞だから。
「…それ以外の方法があるはずだ!! 闇に頼る以外の方法が!!」
それなら僕は…生きる道を選びたい。
――芹霞と。
僕は諦めない。
僕が出来る方法で、僕が芹霞を救いたい。
櫂の影に怯えるのではなく。
櫂に頼りすぎるのではなく。
僕だから出来ることで、芹霞を救いたい。
「方法は…ある」
芹霞の胸を隠すように服を重ね合わせ、布団をかけた僕に…朱貴は、神妙な顔でそう言った。
「緋狭も妹も…緋影の遠縁。故に緋影の肉体には耐性がある。
拒絶するのは…身体のせいではない。心のせいだ」
「心……?」
「直前まで彼女は何をしていた?」
「普通だったぞ。だけど桜が操られて、その原因になった黄鉄鉱(パイライト)の石を見た途端、芹霞は…」
紫茉ちゃんの声に。
「金…? 黄色じゃなくて?」
え?
何で黄色が出て来る?
「黄色じゃない。金という単語が、芹霞の口から漏れていた」
「金。金の…心臓…」
僕は、かつて陽斗が、緋狭さんから"金"と呼ばれていたことを思い出す。
「心臓というより…金の記憶を…拒絶したいのか?」
朱貴は腕を組んでそう呟いた。
「陽斗の記憶!!? そんなことないよ、神崎は!!! 陽斗を忘れちゃ駄目だって、だから心臓の痕を消そうとしていなかったんだぞ!!?」
「もしかして…」
喉の奥がひりつく。
「櫂と…結びつくのが心臓だから。だから…陽斗の記憶を、陽斗の名残を…消そうとしているんじゃ…」
僕の喉から、絞り出るようにして出た言葉。
「だったら…」
ああ…。
「だったら」
芹霞。
「陽斗という心臓を拒絶させない為には、陽斗を思い出させるか、櫂を思い出させるしかないのか!!
だけどそれは結局…芋蔓式に全てを思い出すということだ!!」
思い出したいの?
櫂が思い出せないのが…苦しいの?
櫂を…求めているの?
――紫堂櫂を愛してる!!
僕は唇を噛んだ。