シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「金から連想したのは――
それだけじゃないだろうな」
朱貴が低い声で言った。
「根強く…潜在意識に残るものがあるんだろう。
とにかく…今は俺の力がいくらかは効いているから、微力ながら闇石の代用としての繋ぎが出来ているが…俺の力も万能ではない。
今は凌いでも、次に似たようなことが起きれば、同様な処置が通用するとは限らない。
それまでに真なる闇の使い手を探して、残留する闇から心臓の制御を試みるか、彼女の心を解放して拒絶反応を抑えるか。
このままだと、緋影の心臓は…彼女に仇なすぞ」
――ぎゃははははは。
芹霞の命を繋げた陽斗の心臓が、芹霞の命を脅かすものにはしたくない。
だとすれば…櫂を思い出させるのが得策なのか。
芹霞は、芹霞の身体は…櫂を思い出したくて仕方が無いんだろうか。
いずれかは思い出させようとしていた僕だけれど、命を犠牲にしてまで切実に櫂を求めているのだと思えば、心が焦げそうに痛む。
思い出させたくないと、また思ってしまう。
――紫堂櫂を愛してる!!!
芹霞が求めているのは櫂。
だとしたら今の僕は――。
――玲くんが好きです。
君を引き留めることも出来ない、薄い存在?
全てを思い出したら、僕は…いらないの?
スキダトイッテクレタノニ。
イッショニイキタイトイッテタノニ。
終わりに…したいの、僕と。
そう考えたら――
胸が、嫉妬に苦しくて。
そんな私情を挟む暇なんてないのに!!
「拒絶反応を抑える…のに、どうしてジキヨクナールは効かないんだ? 僕の発作を起こした心臓や紫茉ちゃんのあれだけの反応を抑えることが出来るのに、どうして芹霞には効かなかったんだ?」
薬さえ効けば。
浅ましい僕は、何処までも結論を先延ばしにしたくて。
「紫堂玲。お前は…"心"は何処にあると思う? 喜怒哀楽を感じるモノは…何処にあると?」
朱貴は気怠そうに僕に問うた。