シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
氷皇の大声に隠れるように、由香ちゃんが紫茉ちゃんに小声でこそこそ。
「七瀬は占星術(ホロスコープ)作れるよな!!?」
「占星術(ホロスコープ)? ああ、作れるけれど…」
「だったら頼む。大至急頼む。1人分も完成してなかったら、あの鬼畜ドSに何されるか判らない。頼むぞ、七瀬。ええと、サンプル資料は…資料…あれ、ボクのiPhoneがない!!! え、師匠のも!!? ああ、そうだ。散らばっているiPhone、今神崎のベッドの横にある銀の袋に突っ込んだんだ。うわ、じゃやってないのバレバレ!!?」
「芹霞ちゃーーん、此処かな?」
こちらの焦慮は露知らず、いや知ってるからこそ面白愉快に追い詰めていく氷皇は、じわじわと僕達の首を締め上げていくように、仕切りのカーテンを奥から順に開けている。
「し、師匠…どうしよう。やってないのバレて、しかも嘘ついたから…ここぞとばかりに、氷皇動画…出しちゃうかも…」
「それは…阻止しないと。ぼ、僕達も…行こう!!」
案はなくとも、芹霞を探しに移動した氷皇の後を追って。
「よし此処だな、芹霞ちゃん!!!」
しかし数秒の差で氷皇の動きが速く、正解の場所のカーテンに手をかけていた。
寝ているだけの芹霞が見付かれば、誰も占星術(ホロスコープ)作成をしていないことがばれてしまう。
更には…嘘や楯突くことを嫌う氷皇が、どう返してくるか。
やばい。
僕達は固唾を呑んだ。
氷皇が仕切りカーテンを開けた時――
「「「「………」」」」
氷皇すら無言で。
なぜならそこには――
「ニャア」
「はい?」
横たわる芹霞の元、ベッドにいるクオンと…百合絵さんが、iPhoneを見ながら…紙に何かを書き込んでいたんだ。
「占星術(ホロスコープ)じゃないか」
紫茉ちゃんがその紙を手に覗き込んだ。
「凄いな、何人分だ?」
「…2人でき、今3人目分です。芹霞嬢ちゃまが、作成に根詰めてらっしゃったので。今、仮眠して貰い、このネコと一緒にやってました。ぷふ~」
僕と由香ちゃんは、意外過ぎる光景に口を開けていて。
「ふうん? 作業は…進んでいたんだ? 早いね…。ネコに、占星術(ホロスコープ)出来るんだ?」
面白くなさそうな、そして見下したような目を向けると、クオンは逆毛立てて。
「ニャア!!!」
威張り腐った声をだす。
そして、鉛筆を口に咥えて上下に分かれた円を描き、不規則な12等分をする線を引き…目盛りを振っていき…
「ASCは水瓶座」
iPhoneを覗き込む百合絵さんの指示通り、星座のマークを描いていき、
「火星は…第5宮、12度の処」
「ニャア」
「金星は…」
「ニャア」
それらしき…占星術(ホロスコープ)が出来ていく。