シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

往復 煌Side

 煌Side
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目の前は混沌(カオス)。


おかしなチビ共が泡食って逃げ回る中、見慣れねえチビまで出やがった。


オレンジ頭から茶色の汚らしい長いウサギの耳生やして、尻からは秋田犬のようなくるりとした犬の尻尾。


その顔は――…


「あははは、あれお前…ウサギワンコじゃないか!! 豚の次はウサギか!!!」


俺は頭上に手を伸ばし…

腹抱えて笑い転げているだろう、玲リスを指で弾く。


「あうっ。突然なんだよ!! 何て野蛮な犬なんだ!!! か弱い僕が怪我でもしたらどうするのさ!!」


ぴょこん、ぴょこん。


憤っているけれど、


――僕は頭もいいし、力持ちなんだ!!

――この僕がこんな馬鹿犬と組むのか!!? 1人で十分なのに!!


そんな奴が俺の指くらい弾けなくてどうするよ?


多分あのチビの俺は、櫂用に用意されたものだろう。

そして多分櫂本人も、帽子かぶって"ひゃひゃひゃ"なんて変な笑い方をする黒豹もどきのチビの自分を見て、苦虫を噛み潰したような顔してるに違いねえ。

あんなにうじゃうじゃ湧いて出たけれど…今度は誰を避けて攻撃する事になるのか。

ミスがねえよう注意は払うが、迷路から対象を探さなくてもいい分楽勝だ。


10秒で抜けろ。

櫂はそういって電話を切ったけど、こう視野が広まった中で対象を攻撃しながら突っ走るのは、特別問題なさそうだ。

全力攻撃しながらの全力疾走なんて、もっと過酷なこと…緋狭姉にやらされてきたんだ。絶叫して、本能的に全力出さざるをえない状況を、俺は突破して生きてきたんだから。


色々あったな…。

俺の目線は遠い向こう。


………。


……よく生きてきたな、俺。

偉いぞ俺。


無性に自分を褒めたい気分になった。


そんな緋狭姉との記憶は、再現される度に今の俺の心を支えている。

それがいいんだか悪いんだかよく判らねえけれど、俺の誇れるものがこの無駄にありあまる体力だというのなら、それを駆使して次に繋げたいんだ。

これだけしか、俺には櫂を支えるものがねえんだし。


そんな時鳴り響いた朱貴の声のアナウンス。


『罰則(ベナルティー)レベルC。

"大好物"を禁ず。

犬とリス、それぞれ大好物を宣言し、それ以外へ100攻撃せよ』


攻撃するのは大好物"以外"。

ひっかかってはいけねえ!!

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