シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


本当だ。

テトリス台の音楽が早い。


つまり…落下速度が速まっているということか?


3秒ずつ…早まるのなら。

それにブロック踏んだり、下段をずらしたら…。


………。


「…俺が計算出来るわけねえだろ。ニノ」

『お答えします、馬鹿犬』


何か変な修飾語ついてねえか?


『ブロックを踏むと落下速度が5秒縮まります。

つまり7秒の待機時間を経て、2秒で落下します』


「2秒!!!?」


重いものがゆっくり落下するのと、瞬間的に落下するのとでは、受け止める身体への衝撃度が違う。


俺は散々…緋狭姉にやらされてきたんだよ。


400kg…2秒!!?


冗談じゃねえぞ!!?


『その前に下段を動かせば、更に落下速度は5秒縮まりますので、実質…瞬間落下です』


「はあああ!!?」


ブロックは踏めねえ。

2秒落下の受け止めだって、出来るかどうか。


テトリス台を見ると、ブロックが偏って綺麗に並べられていて、横一列には出来そうもねえ。


何も出来なくて、ただブロックを落して帰るのだけはしたくねえ。

どうしたらいい!!?


何も出来ずに、櫂に期待するか?


「僕の出番だね!!!」


ひょこひょこと出て来たチビは、また鉄の胡桃をがんがんと投げて隙間に埋めた。


「お前…今の状況聞いてたか? 

お前が土台並べても…俺が…」


「出来るだろう、お前なら」


振り返りざま、何でもなさそうにチビに言われた。


「瞬間だろうが、ゆっくりだろうが…此処までGAMEを勝ち抜いてきたお前なら、出来るだろう?」


その当然というような口調は、どことなく玲を彷彿させた。


「出来ないなんて言わせないよ。僕、そんなお前に負けたなんて、思いたくないよ。僕の為にも、ああ…やはり負けたのは当然だっていうくらいの、圧倒的な力を見せてみろよ」


俺は――…


「僕はお前ほどの身長ないんだぞ? だけど頑張ってるんだ。お前だって頑張れよ。出来ないなんて…決めつけるなよ!!! あまり情けないこと言うなら、僕は怒るからな!!!」


俺はチビリスに笑った。


「さんきゅ。やってやる」


俺は自分の頬をパンパンと叩いて、気合いを入れる。


「ふん。やれなかったら、僕の最終奥義…"サンダーボルトアタック"お見舞いするからな!!!」


俺の手が止まる。


何だ、その名前…。


「お前も…ゲーム好きなのか?」

「勿論さ!!!」


まあ…玲だものな。

あんな小さい手で…コントローラー持つのかよ…。

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