シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「凄いよな、あのリス、男だな!! 俺も頑張らないと!!」
翠は鼻息荒く…扉を開ける。
手にした解答数は1枚に複数個あり、その上限はまちまち。
ざっと見た限りでは、アタリの山の方が長文問題が多い分、若干問題数が多い気がするから、最悪ハズレの山の問題用紙の解答が全滅していても、何とか正解率は60%は超えるだろうと推測している。
そこからによるアタリの山から1枚、ハズレの山から1枚の持ち出しは、今回俺達が提示した2枚の解答用紙の内、不正解が40%以下の割合であったらしく、扉を開けば…俺が潰したばかりの混沌とした迷宮が拡がった。
前の情報は保持されている。
玲が言うならば…
"セーブデータは引き継ぎになっている"
と言う処だろうか。
しかし…何で同じ迷宮を行き来しているというのに、煌と擦れ違わないのだろう。
それからこの『不思議の~』のチビキャラ。
特に帽子を被ったおかしな黒豹もどき。
変な笑い方をしてから、むっとした顔で顔を赤らめて。
「やっぱこれ、紫堂櫂じゃね?」
恐らくは狂った劇中に登場する"帽子屋"なんだろうが、恥ずかしくて嫌なら何で参加するんだ?
「なあなあ…また俺がいない~」
翠は不満そうで。
「いるだろう? 煌もどきの腕に張付いている…」
「俺はサルじゃねえよ!!!」
キーキーと反論するけれど…
どう見てもあの超ミニ小猿は翠だと思う。
今の処策は上々。
テトリスは順調に段消しに成功している。
翠とこの迷宮に入るのは3度目。
翠の素早さは期待以上だ。
今まで共にゲームをしていた時は、ひたすら逃げるだけの姿しか見ていなかったけれど、俺達もどき達へ攻撃をするその様を見ていたら、素早さの中にも攻撃の型は安定していることに驚嘆する。
目標を定めて、しっかりとした方向付けさえ出来れば、翠は食らいつけるだけの力はある。
ただし…何故か桜には弱い。
桜が出て来ると身体の動きがぴたりと止まり、不可解に"もじもじ"する。
桜が苦手なんだろうか。
ただ丸まって寝ているだけに見えるが。
それ以外の動きは実に伸び伸びと。
見ていて清々しく思える程。
どこまで未知数なんだろう。
限界の見えない可能性は素晴らしいと思う。
願わくば俺も、まだ限界には行き着きたくない。
まだまだ俺は、強くなりたいから。