シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「翠、お前扉で解答待つ時間にかかる曲は覚えているか?」
「曲? あの ♪郵便やさん~とか、♪白ヤギさんから~とかの奴か? あれ2曲しかないよな」
「曲に乗って行くぞ」
「は? また?」
使えるモノは使ってやる。
この考えに至るものを誘導せんが為の曲かもしれない可能性はあるけれど、此処をCLEARする為には、あえて乗ってやる。
というか、それしかない。
今ある手札で、即座に有効利用できるものは。
「ああ。4拍子、きっちり正確なリズム刻んでいるのは、"山羊の郵便"だ。
しろ、やぎ、さん、から、おて、がみ、つい、た~…この間隔で交代する」
手で拍子を取りながら翠に説明する。
「歌詞上、切りの良い処が4の倍数であり、その倍の8の倍数にあたる。2つの倍数の共通数もまた、切れの良い処にあたるはずだ」
そこで目を細めた。
4拍子目は4の倍数たる三月ウサギになるが、次の4拍子目の8拍目。
これは8の倍数だが…4の倍数でもあるから、チェシャ猫への攻撃が優先される。
だとすれば――
8の倍数であるシロウサギは攻撃する必要がない。
更には――
4拍子ごと、三月ウサギとチェシャ猫は交互にくる。
そして尚…
「奇数…翠から始めれば、必ず俺にあたる…」
翠は――…
ウサギ2種と猫以外攻撃すればいい。
そして俺は――…
ウサギ2種と猫以外、三月ウサギ、ウサギ2種と猫以外、チェシャ猫…その繰り返しパターンを踏めばいいだけ。
難しく…考えすぎていたのは俺の方か。
頭で考えすぎれば即座に、話はややこしくなる。
そう、学習してきたはずだ。
頭で混乱するなら、身体に聞け。
身体は…解答を持っている。
「"♪白やぎさんから~"、うん…こっちの方が判りやすいや」
翠もリズムを取り始めたようで、首が左右に振られている。
そう、これは…拍子を刻むリズムが正確であるから、リズムが取りやすいんだ。
「よし、ニノ…テンポ120…いやその倍。山羊の郵便、歌詞つきで」
『畏まりました』
ほのぼのとした旋律の前奏が鳴り響いたけれど。
「早っ!!!」
翠が声を上げた。
「時間がない。身体を慣らせ!!」
「ひ~~」
「翠、お前から行け。ずっと"2種のウサギと猫以外"だ!! "以外"だぞ!!!」
「う~、判った!!!」
♪白 やぎ さん
「よし、いいぞ!! 俺は三月ウサギ…」
♪お手 紙 つい
「その調子!! 俺はチェシャ猫!!」
俺は逃げ惑うチビ久遠の尻尾を捕まえて、
「謎々を言え!!!」
威嚇するように怒鳴った。