シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


小さくても久遠の顔は、人形のように整っている。

無表情で人を馬鹿にしたような顔だけれど、パーツの位置は絶妙。


比べて俺は…"ひょひょひょ"。

何だよあれは。

何だよ、この差…。


「仕方ないな…。では言う」


やる気のなさそうな声。

嫌悪に満ちて俺を見る…紅紫色の瞳。


殴り飛ばしたいのを我慢して、久遠の言葉を待つ。



「愛がないとできないもので、

時に野外や車中もあるけれど、

する場所は椅子やベッド上が多い。

相手のテク次第で、少し痛くて出血したりするが、終わった後の満足感は大きい。

カタカナで書けば4文字。これ何だ?」



そしてにやりと嗤う。


「答えろよ、馬鹿なお前に答えられるものなら」


…………。


久遠の馬鹿にしたような顔を向けられ、俺の顔が険しくなるのが判る。


「し、ししし紫堂櫂。これ…この答え…」


真っ赤になった翠が、裏返った不安定な声を出している。


「これ、これ…」

「さあ大きな声で答えてみろ、紫堂櫂」


だから俺は――


「うわわわ、これは放送禁止!! あそこで寝てる、純粋無垢なる葉山に聞かせるな~」


俺の口を塞ぎにかかった翠を押しのけ、不機嫌に言った。


「久遠、それくらい、大声で叫んでやるよ」



そして、声を張り上げた。




「献血ッッ!!」





すると久遠は舌打ちしてから、溜息をついて。


「正解~」


欠伸をしながら消えて行った。



「ケ…ケンケツ…?」



翠が廃人のようにふらふらしながらそう繰り返して。


「そうだ。さあ、続きやるぞ、翠!!!」


俺は翠を急かした。


何で桜には聞かせたくなかったのか…、そちらの方が久遠の謎々より判らなかった。

< 564 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop