シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
小さくても久遠の顔は、人形のように整っている。
無表情で人を馬鹿にしたような顔だけれど、パーツの位置は絶妙。
比べて俺は…"ひょひょひょ"。
何だよあれは。
何だよ、この差…。
「仕方ないな…。では言う」
やる気のなさそうな声。
嫌悪に満ちて俺を見る…紅紫色の瞳。
殴り飛ばしたいのを我慢して、久遠の言葉を待つ。
「愛がないとできないもので、
時に野外や車中もあるけれど、
する場所は椅子やベッド上が多い。
相手のテク次第で、少し痛くて出血したりするが、終わった後の満足感は大きい。
カタカナで書けば4文字。これ何だ?」
そしてにやりと嗤う。
「答えろよ、馬鹿なお前に答えられるものなら」
…………。
久遠の馬鹿にしたような顔を向けられ、俺の顔が険しくなるのが判る。
「し、ししし紫堂櫂。これ…この答え…」
真っ赤になった翠が、裏返った不安定な声を出している。
「これ、これ…」
「さあ大きな声で答えてみろ、紫堂櫂」
だから俺は――
「うわわわ、これは放送禁止!! あそこで寝てる、純粋無垢なる葉山に聞かせるな~」
俺の口を塞ぎにかかった翠を押しのけ、不機嫌に言った。
「久遠、それくらい、大声で叫んでやるよ」
そして、声を張り上げた。
「献血ッッ!!」
すると久遠は舌打ちしてから、溜息をついて。
「正解~」
欠伸をしながら消えて行った。
「ケ…ケンケツ…?」
翠が廃人のようにふらふらしながらそう繰り返して。
「そうだ。さあ、続きやるぞ、翠!!!」
俺は翠を急かした。
何で桜には聞かせたくなかったのか…、そちらの方が久遠の謎々より判らなかった。