シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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ドゴン。

ガゴン。


廊下から、何かが壁にぶつかるような鈍い音が響いてくる。


「桜には…刺激、強すぎちゃったみたいだね」


やや引きつり気味に苦笑しながら、玲くんが呟いた。

この音の正体は桜ちゃんらしい。


石のように硬直していた桜ちゃんだったが、苦笑した玲くんが口早に何やら指示を出せば、条件反射的に立上がり室外に出ようとしたのだけれど、いつになく…ふらふらと足元覚束ない様子で。


そして――


ガゴン。

ドゴン。


その音は途絶えた。


「あ…床に転んじゃったんだね。明日、雨降りそうだな…」


玲くんは、見ずとも情景が判るらしい。


「桜、凄く気を張り詰めていたから、違うことで気を紛らわせてあげようとしたんだけれど。背中すら触れられないその初々しさに、ついつい悪戯心が芽生えて…ちょっとからかい半分、途中で余裕なくしてからかい抜きに、かなり見せつけすぎたからな…」


「何を?」


色々なことをかなり省略して話す玲くんは、バツの悪そうな顔で…あたしの首筋をちらりと一瞥し、


「いやその…"先客"の痕が気になってしまって…その…色々とその…」


と言い淀み、そして何故か…照れたように俯いてしまった。

まるで毛のことを聞いた時のように"ぽ"だ。


今のどの要素に照れる部分があったのだろうか。

イマイチ、玲くんの照れ照れポイントがよく判らない。


それより。


「ねえ…此処は何処?」


白と黒しかない部屋。


初めて見る部屋だけれど…。

整然とし過ぎたモノクロの世界。

余計なものが置いていないというのか、

何も置いてあるものがないというのか…


飾るという"無駄"な機能を無くした、無機質すぎる部屋だ。


何だかまるでこの部屋――


「……?」


今、誰かの部屋を彷彿しかけて…


「桜ちゃんの部屋?」


黒故に…桜ちゃんの部屋だと思った。

それ以外の知り合いに、ここまで無彩色の部屋の持ち主はない。

頻繁に足を踏み入れる煌の部屋はもっと雑然としていて、もっと色彩が強いし。

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