シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「ふふふ、どう? 僕の力…「「お前のせいだ~ッッ!!!」」
鼻高々なレイに叫ぶ煌と翠は、レイの両側について、片手を伸ばすと――
「え? え? 何だよ、何…ほっぺ引っ張らないでよ!!! 僕、活躍したじゃないか!!! 見ただろ、サンダー…「「無駄な奥義は使うなッッ!!!」」
「な、何だよ!!!? 痛い、ほっぺつねるなよ、お前達は鬼、悪魔!!? 信じられないよ!!」
半泣きのレイは、憤る2人に鉄の胡桃を乱発して、全速力で逃げ出した。
そんな時だった。
空から…落下していたブロックが地面に到達しようとしていたのは。
ゲームが終了しても、既に頭上に出現していたブロックは制止できなかったらしい。恐らく…最後の1ブロックだ。
そこに丁度レイが走ってきて…
「あうううっ」
滑り込むようにして転んでしまったんだ。
ブロックの真下に。
「おい、逃げろッッ!!! スルメになるぞ!!?」
慌てた煌の声にむくりと起き上がったレイ。
「え、えええええ!!!?
うわ、うわわわわ!!!?」
「身体捩るな、仰向けになるな…ああ、間に合えッッ!!!」
煌はブロックを持ち上げようと駆け、俺は力を使って弾こうとしたその時。
ブロックがレイを押し潰す…その寸前。
「むむむむむむ…」
おかしな擬音語と共に…ブロックは、突如動きを止めて…僅かに上昇したんだ。
「俺、力使ってないから!!!」
「俺だって何もしてねえぞ!!? 櫂か!!?」
「いや俺も…え!!!!?」
「むむむむむむむ…」
「「「ええええ!!? リスが…仰向けのまま…ブロック持ち上げてる!!!?」」」
そう。レイが、両手を挙げて、ブロックを持ち上げて――…
「むむむ~!!! 僕はスルメにはならないからね!!!? ん~~ッッ、とおおおッッ!!!」
後方、遠くに放ったんだ。
ズドーン。
そう、"後方"。
煌がしたのと同じ…ジャーマン・スープレックスの体勢でフィニッシュ。
「「「………」」」
レイは立ち上がると、パンパンと両手を叩いて手についた汚れを落とし。
「ふう~。危ない処だったよ。何? ありえない? 僕は言ってただろ、鍛えているから力持ちだって。これくらい平気さ!!」
それは何度も耳にしていたけれど、あんな重いブロックを…本当に持ち上げられるとは誰も微塵にも思ってもいなくて。
………。
一番ショックを受けたのは翠だったらしい。
「リスが持てるのに…俺…」
そう項垂れ、鼻を啜る。
次いで、遠い目をした煌がぼやく。
「あれさ…ブロック受け止めた仰向け状態からブリッジ作って…その反動で投げる方が、凄く難易度高いよな。
なあ、櫂…。何なんだろうな、この敗北感…。俺…人間やめようかな…」
「……煌、気にしたら、人間の負けだ」
俺は、煌の背中をぽんぽんと叩いて宥(なだ)めた。
◇◇◇
《UnderWorld 009》