シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
利息 玲Side
玲Side
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突如現われた氷皇。
僕達を引っ掻き回すに良いだけ引っ掻き回し、元来の酷薄さを漂わせて僕に寄越したのが…入塾案内のパンフレット。
今この時期に、現役高校生でもない僕に、塾に行けなどと不可解なことを言う。
僕はそのパンフレットに見覚えがあった。
これはかつて、火事にあったマンションから逃げ出すようにして、皆で宿泊したロイヤルホテルのロビーにて、氷皇からのプレゼントとして、桜華の制服と共に芹霞が受け取ったものではなかったか。
あの時も渡された意図が全く見えぬまま、パンフレットに記載されている運営組織名を眺めていた気がする。
"黄幡会"。
………。
オウバンカイ。
反芻するように、その単語の響きを反射的にカタカナ変換した僕の頭で、不意に1つの長い文字列が再構成された。
"シュウキョウホウジン オウバンカイ"
「今度のものはお前の分だ。お前の名で、手続きはすんでいる」
加えて、"僕の名前での手続き"というキーワードで、更に深く掘り起こされた…出来れば忘れていたかった記憶が蘇ったんだ。
青く染まった、唾棄したい記憶が。
『新規ボンドカー購入につき、
請求書2発行済。トイチは敢行中
by青い007』
さあっと…僕から血の気が引いた。
僕、まだ振り込んでない!!!
更には――
「玲。"解いた"のか?」
それはつまり、名指しで送られる青い手紙のことだろう。
腹立たしい心地になりながらも、僕は都度きちんと解いているはずで……。
………。
いや、解いていないのが1つあった。
僕の視界の片隅に…百合絵さんが寝ていた場所の仕切りカーテンが開かれている。
氷皇が、芹霞を探す名目で…カーテンを開けていたのだとしたら。
僕からよく見える絶妙な位置に、青い手紙が貼られている…青いクーラーボックスが鎮座しているのは、偶然とは思えない。
暗に急かされていたのだと気づいた時には、時既に遅し。
氷皇が自ら乗り込み、直接問い質すという…異例な事態に陥っているのは、それに気づかない僕へ制裁を加えにきたのかもしれない。
「解いていないな、その様子では。では、中身には目を通したのか? その上での判断か?」
酷薄めいた顔。
妙に押し鎮められた声音。
まるで嵐の前の静けさのようだ。
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突如現われた氷皇。
僕達を引っ掻き回すに良いだけ引っ掻き回し、元来の酷薄さを漂わせて僕に寄越したのが…入塾案内のパンフレット。
今この時期に、現役高校生でもない僕に、塾に行けなどと不可解なことを言う。
僕はそのパンフレットに見覚えがあった。
これはかつて、火事にあったマンションから逃げ出すようにして、皆で宿泊したロイヤルホテルのロビーにて、氷皇からのプレゼントとして、桜華の制服と共に芹霞が受け取ったものではなかったか。
あの時も渡された意図が全く見えぬまま、パンフレットに記載されている運営組織名を眺めていた気がする。
"黄幡会"。
………。
オウバンカイ。
反芻するように、その単語の響きを反射的にカタカナ変換した僕の頭で、不意に1つの長い文字列が再構成された。
"シュウキョウホウジン オウバンカイ"
「今度のものはお前の分だ。お前の名で、手続きはすんでいる」
加えて、"僕の名前での手続き"というキーワードで、更に深く掘り起こされた…出来れば忘れていたかった記憶が蘇ったんだ。
青く染まった、唾棄したい記憶が。
『新規ボンドカー購入につき、
請求書2発行済。トイチは敢行中
by青い007』
さあっと…僕から血の気が引いた。
僕、まだ振り込んでない!!!
更には――
「玲。"解いた"のか?」
それはつまり、名指しで送られる青い手紙のことだろう。
腹立たしい心地になりながらも、僕は都度きちんと解いているはずで……。
………。
いや、解いていないのが1つあった。
僕の視界の片隅に…百合絵さんが寝ていた場所の仕切りカーテンが開かれている。
氷皇が、芹霞を探す名目で…カーテンを開けていたのだとしたら。
僕からよく見える絶妙な位置に、青い手紙が貼られている…青いクーラーボックスが鎮座しているのは、偶然とは思えない。
暗に急かされていたのだと気づいた時には、時既に遅し。
氷皇が自ら乗り込み、直接問い質すという…異例な事態に陥っているのは、それに気づかない僕へ制裁を加えにきたのかもしれない。
「解いていないな、その様子では。では、中身には目を通したのか? その上での判断か?」
酷薄めいた顔。
妙に押し鎮められた声音。
まるで嵐の前の静けさのようだ。