シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

これでは――…

芹霞を手になんて入れられない。

櫂達に…仲間として迎えて貰えない。


これが…現実。


夢の舞踏会の時間は終わり、僕は…またこれから、底辺に戻ったシンデレラの心境で、0から頑張って行かねばならないというのに…僕は悠長に時間を過ごしすぎたんだ。


もっと我武者羅に、貪欲に動いて、少しでも目で判って、僕の自信となる"強さ"を身に付けねばならなかったのに。

スクワットをしながらでも、策は練ることは可能だったのに。


今…何1つ、僕の"変化"の成果がない。


"覚悟"を軽んじていたのは僕自身。


魔法のような奇跡の時間に、強さを願っていたんだけだった。

願えば叶うと…どこかで甘ったれていたんだ。



僕は…8年前の櫂を思い出す。


あんな弱々しかった櫂でさえ、強くなるために、状況を変えるために…自ら動いたというのに。

その櫂に僕は負けたというのに。


ああ――

思っているだけでは駄目だ。


僕はもっと時間を有効に使って、具体的に動くべきだった。

もっと真剣に"強さ"を考えるべきなんだ。


何をとろとろしていたんだろう、僕は。


この間でも…櫂は強くなっているだろう。

だけど僕は…何も変わっていない。


肉体的にも精神的にも。


それを…恥じた。


非情で酷薄な男が、本当に僅かに見せたお節介は、


――諦めるな、玲。

――強くなれ、玲。


何処か緋狭さんに通じるものがあって。



「噂は…火のない処には生まれない。

必ず、"何か"があるから生まれるもの。


何がどう変化するものか…

それは興味深いところである。


噂という"1"が、"0"から派生したのか、

"虚数"という他の要素から派生したのか。


或いは、噂という"1"は、この先も"1"にしか過ぎないのか。

"0"になるのか、"虚数"になるのか…。


お前も同じだ、玲。


ただの"0"に留まるか、"1"になるか、"虚数"になるのか。

俺を失望させるな」



だから僕は…

素直に聞けたんだ。


多分、これが最初で最後だとは思うけれど。

優しい…緋狭さんの、影を見たから。

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