シンデレラに玻璃の星冠をⅢ

きょろきょろ辺りを見渡すあたしに、


「紫堂本家だよ、ここは…。桜の部屋じゃない」


玲くんが微笑んだ。


「紫堂? あれ、あたし確か――…」


最後の記憶は――


――いやあああああああ!!!


「"約束の地(カナン)"は!!!?」


赤い赤い…火に包まれて海に沈んでいく"約束の地(カナン)"。

突如激しくあたしの身体が震え出す。


「皆は!!!?」


思わず衝動的にベッドの上に立ち上がれば、ふかふかすぎたベッドが思った以上に大きく揺れ、そのまま体勢を崩したあたしは壁に激突…


「危ない!!!」


寸前で、真向かいから玲くんに抱き留められた。


「あ、ありが…」


あまりに驚いて乱れた呼吸を整えている時、玲くんがあたしの名を呼んだ。

徐(おもむ)ろに顔を上げると、玲くんは両手であたしの頬を支えて、至近距離から玲くんを見上げる形で固定させた。


「大丈夫だからね?」


憂う鳶色の瞳は…強い意思を宿している。


「"約束の地(カナン)"の土地は崩れても、皆はその前に海の下に避難している。皆は事前にちゃんと判っていたんだ。久遠もね。だから芹霞、心配することは何もない。僕達は哀しんで引き摺ってはいけない」


まるで…そうでなければいけないというような、強い瞳。


「僕を…信じて」


何で判っていたのか、いつから判っていたのか。

ワンコゲームをしていた時には、皆判っていたのか。

ヘリで玲くんが叫んだのは、演技だったのか。

あの半端ない衝撃に、海の下は本当に皆を守れる程の強度はあったのか。


色々聞きたいことはあったけれど…そうであることを信じたいのは、玲くんなんじゃないかと、何となく思った。


嘘をついている瞳ではない。

皆の命は保証されていることを、玲くんも誰かに聞いたんだろう。

桜ちゃんか…あの…破いた青い手紙に書かれていたのか。



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