シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「それから――。
"それ"は…俺からの"貸し"だ。貸しは、必ず返して貰う。
失望させたら、"それ"は3倍になること、覚えておけ」
貸し……?
僕の意見を無視した…、そんな一方的な貸し程嫌なものはない。
僕に…何を…?
まだまだ聞きたいことはあったけれど。
聞くことすら拒否して、氷皇は去った。
青色が消えた瞬間、あちこちから深呼吸の音が聞こえた。
「身体に悪いよ、氷皇は…。あ…またボク、兄貴の居所、聞き忘れてしまったじゃないか!!!くそ~~ッッ!!!」
由香ちゃんは悔しがっていた。
「なあ、玲。氷皇が言ってた貸し…やっぱり"それ"ってソレのことだよな。あたしも…突然不思議だなとは思ってたんだ。あの男が絡んでいたのか」
謎めいた言葉を放ち、紫茉ちゃんが僕を指を指した。
意味が判らない僕は、僕はきょとんと首を傾げる。
「紫茉ちゃん。ソレって…何?」
「七瀬、師匠が何だって……。
……!!!! 師匠!!!!」
突然由香ちゃんが顔の全てを大きく開いて、やはり同じように僕に指を指して、ぶるりと震えた。
「僕が、な、何だよ…!!?」
その派手な驚きように、僕は何だか…得体のしれない不安に襲われて。
どすどすどす…。
「あれで、良かったんですか~?」
低い低い嗄れた声。
百合絵さん……を率いて前を歩くのは、小さな小さな白いふさふさ猫。
そして、僕を見ると――…
「坊ちゃま!!!」
百合絵さんが僕を見てぴたりと足を止めた。
ぶるんと、お腹の肉が震えた気がする。
「ちっ」
舌打ちのような音がして、そちらの方を向けば、足元で僕を見上げている猫からで。
「今…舌打ちはこのニャンコから聞こえたよな?」
「多分。あたしにも…そう聞こえたが…。猫は占星術(ホロスコープ)も書けるし、舌打ちもするのか。随分と…人間っぽい動物だな」
「まあ…クオン様だからな…」
気のせいじゃない…だろう。
舌打ちする猫なんて初めてみたけれど。
本当に不機嫌そうな顔で、僕に背を向けてまた芹霞の方に戻ってしまった。
「何だよ、僕が一体なんだよ!!?」
よからぬ不安に、僕は声を上げた。