シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


湿布を剥がして見ても、僕の頬は膨らんでない。


感動…!!!


軽く叩いてみても、指でつついてみても痛くない。


感動…!!!


強めにパンパンしても、伸ばして抓ってみても痛くない。


超感動!!!!


初めて氷皇がいい人のように思えた。


――貸しだ。


それが、怖いけれど。

刃向かったら…3倍…、それも凄く怖いけれど…。


「よかったね、師匠!!! 癒し系のリスみたいな可愛いお顔だったから、バイバイするのは名残惜しいけれど、これで神崎攻めてもサマになるね!!!」

「そうだね、何をしても恥ずかしかったから、よかった…!!!」

「何をしてってナニをしてたんだよ」

「聞くだけ野暮じゃ…「ゴホン」 


わざとらしい咳払いが聞こえた。

それは朱貴からで。


しまった。

無駄口を叩きすぎた。


はっとした僕は表情を引き締めて、朱貴の前で深く頭を下げたんだ。


「朱貴、お願いします…」


そして顔を上げ、真っ直ぐに濃灰色の瞳を見た。


「僕に…稽古をつけて下さい」


僕の、真剣な心が伝わるように。


氷皇に貶(けな)されても、それでも僕が強さを求める心はぶれていない。

求める方法を、変えたいんだ。

強さを現実とする為には、これしかない。


「師匠!!!?」

「坊ちゃま…」

「玲……」



「出来ることからしていきたいんだ。

かつて緋狭さんに言われた。

強さとは…心技体。三位一体だと。

全て…今の僕には不足している。


その中で…まず僕は体力がなさすぎる。肝心な時、すぐ心臓にきてしまう。

これは…鍛え方が足りないから。

まともな稽古は8年間していない。自己流で体力維持の為の基礎鍛錬をしていたくらいだけ。

僕は初心に…還りたいんだ」


初心に還って頑張らないといけないのは…恋だけじゃない。

矜持も何もかも捨て、僕自身も原点に還らないとだめだ。


僕は唇を噛みしめて、訴えた。


「守る為には、僕が強くならないと駄目だ。今まで、稽古をしなくても…それなりに戦えてこれた僕は、自分を過信し過ぎていたのだと思う。

僕には…0からの稽古が、修行が必要なんだ!!」



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