シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「お前を利用しているかもしれないぞ?」
「結果的にでも…氷皇を通して緋狭さんが紅皇職を朱貴に"譲った"ということは、緋狭さんは朱貴を認めているということ」
「緋狭は知らないぞ、紅皇が俺になったことは」
僕は静かに、首を横に振る。
「不思議と…そんな気はしない。
緋狭さんは…知っていたような気がする」
あの氷皇が――
朱貴を紅皇に任命したという事実。
緋狭さんのような、僕を導くような言葉を吐く為に動いたという事実。
必然のその動きは、何か理由があったはずで。
朱貴との関係は不明だけれど、氷皇が認めた男には変わらなく、何より氷皇は…簡単に緋狭さん以外を紅皇にしないと思うんだ。
だとしたら。
既に緋狭さんとの間に、取り決めがあったはず。
氷皇との間にか、朱貴との間にか。
そこに緋狭さんの意思が絡んでいるのであれば、朱貴の何を疑う必要があるのだろう。
「もう一度聞く。俺を信じるのか?」
「はい」
僕は深く頷いた。
そして沈黙が流れる。
僕と朱貴に、皆の視線が向けられているのが判る。
もしも朱貴に拒否されても、僕は土下座してでも懇願し続けるつもりだ。
今の僕には、朱貴が必要なんだ。
だからこそ、氷皇は…朱貴を寄越したのだと思う。
僕は、朱貴から教わらないといけない。
そして――
「6時。A体育館。1分でも遅れれば俺は帰る」
朱貴は受入れてくれたんだ、僕の熱意を。
「ありがとうございます!!!」
僕は何度も頭を下げた。
「ま、紅皇は紫堂次期当主の教育係だからな。仕方が無い…」
気怠そうに髪を掻きあげ、そして視線だけ紫茉ちゃんに向けた。
「何だ紫茉、何を言いたい?」
すると僕の隣に歩み寄った紫茉ちゃんが、ぺこんと朱貴に頭を下げたんだ。
「あたしも…鍛えて欲しいんだ」
僕と朱貴は、訝しげに目を細めた。
「あたしも…皆を守れるだけの力が欲しい」
そう上げた顔は悲痛で。
「知らない処で皇城に…周涅に利用されているのは嫌だ。それに、芹霞をあたしだって守りたい。大事な大事な友達なんだ」