シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
………。
友達だと…判っている。
"芹霞を守るのは僕だけでいい"。
その言葉を飲み込んだのは、紫茉ちゃんの顔があまりにも真摯すぎて…何だか僕が僕の勝手ばかり押し付け、嫉妬ばかりしている矮小で狭量な男に思えたからで。
少し…気分が滅入ってしまった。
紫茉ちゃんは芹霞の同性の友達で、クオンはただのネコなのに、どうして僕はこんなに妬いてしまうんだろう。
もっと自分に余裕を持ちたいよ。
「おい、お前だって、玲同様…狙われている身なんだぞ?」
ここは朱貴に結論を託そうと思った。
紫茉ちゃんの相手は、朱貴だし。
「だからこそ。玲だって抵抗して皆を守る為に強さを求めている。あたしだって同じだ。翠も…強くなる為に、櫂と煌と一緒行ったんだ。あいつだってもがいている。あたしだけ、のほほんとしてはいたくない。
あたしに超能力はない。あるのはこの身1つだからこそ!!! 1分1秒…あたしだって強さにしたいんだよ」
………。
何だか…僕より格好いい紫茉ちゃん。
由香ちゃんも心なしか、ぽっとした顔をしている。
「まずは桜を取り戻さないと。今のあたしの力では、桜は抑えられなかった。玲だけだ、抑えられたのは。その玲がまだ強さが足りないというのなら、あたしは更に頑張らないといけない。
皆だってもがいて頑張っているのに、あたしは黙ってはいられない」
紫茉ちゃんの潔さ、女にしておくのは勿体ない。
ああ、ここに芹霞がいなくて本当に良かった。
――紫茉ちゃん、素敵!!!
目に見えるようだよ。
「お前は…黙って守られていればいい」
朱貴は無表情で言った。
「余計な闘いをしようとするな」
同じ男として、朱貴の言い分に同感してしまう僕。
愛すればこそ、好きな女性を危険な目に合わせたくないのは、僕だって同じこと。
朱貴は、紫茉ちゃんを守りたいんだ。
紫茉ちゃんに、守られていさせたいんだ。
守るということで必要とされたいんだ。
それだけが…朱貴の愛の証だから。
「頼む、朱貴。大事な者の為に…身体を張る強さをつけさせてくれ。お前のように…」
紫茉ちゃんが聞き逃していたと思った、氷皇が揶揄した"朱貴の片想い"のことを指しているのだろう。
それが話題に出ると言うことは、紫茉ちゃんなりに何か気になっていたのだろうか。