シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



僕は汗だくになりながら、由香ちゃんに電話した。


『は!!!? 送金できない!!? 今、銀行探してみるから!!』


持つべきものは機械仲間だ。

由香ちゃんの教えてくれた場所に僕は走った。


だけど――…


『このカードはお取り扱い出来ません』


他の場所は使えたんだぞ!!?


『支店は閉鎖しました』


何で今日閉鎖するんだよ!!?


『只今、係員を呼んでいます』


何で来ないんだよ!!?


時間は無情にも…刻々と過ぎていく。


「由香ちゃん、他にない?」

『師匠…ネットバンキングは?』

「そっちは残高足りない」

『ボクが足りない分、貸して上げるよ』

「ホント? 4000万足りないんだけど…」

『………。ぐすっ。ごめん、師匠。その100分の1もない…』


今、5時30分。

2度目の1割増。


――あはははは~。


時間を大切に考えなかった僕が悪いんだ。


『師匠…桜華新館の8台のATMも駄目だったのかい?』

「新館…? 新館にもあるの!!?」

『師匠は立て看板見てなかったのかい!!? 別館と新館に移動したっていう…。まあ…七瀬から聞いた話だけれど』

「別館にもあったの!!?」

『……あ、七瀬から電話…。うん、ホント!!? あ、もしもし師匠。七瀬が確認してくれてる!! 新館はちゃんと使えるって!!!』

「ありがとう、今戻るから!!!」


歩けばゆうに30分はかかるだろう道程を、我武者羅に走って10分で舞い戻る。

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