シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「大丈夫だよ、そんなもの…慣れるから」
「何があるの、此処に…」
「あれかな…?」
イチルちゃんが指を指した場所。
地面には丸の中に何かの図形が描かれていた。
そこに真上から月の光が差込んでいて、スポットライトのように…照らしていた。
その図形の上に横たわる…
数匹のワンコ達を――…。
裂けた口から舌をべろんと出して、どす黒い身体から、どくどくと赤黒い液体が流れていた。
「ひっ!!? 芹霞ちゃん、おめめ…」
**があたしに縋り付いた。
そのワンコには――
眼球が…なかったんだ。
あたしは思わずぎゅっと**を抱きしめた。
怖くて仕方が無い。
何これ…これは…。
「せ、せせ芹霞ちゃん。ポ、ポチ…あれポチ…」
それは**とふさふさワンコを捕まえた時、
――このワンワン、お目々が青くて綺麗…。
**は首輪に赤いリボンを結んでいたんだ。
それがついていた"ポチ"の目が抉られていて、あたしはひっと短い悲鳴を上げた。
「ああ…ウジガミ様にお供えしたの。綺麗だったからね」
"あそこに"
そう促された場所には、蛇の様な石の像があって。
その前に…お月見のお団子のような飾られていた丸いモノ、それを…イチルちゃんは嬉しそうに見つめていた。
その時、ひらひらと何かが飛んで来て、イチルちゃんを取り巻くように舞った。
黄色い…蝶々だった。
「忌々しい…黄色い色なんて。
私の魔法は…こんなものには解けやしない。
私の魔法は…本当になるものなのよッッ!!!」
そして片手で蝶を掴むと、
ぐしゃりとそれを握り潰してしまったんだ。
「夢には…させないッッ!!!」
鬼のような形相というのは、こういう顔を言うのだろう。
**だけじゃなく、あたしの身体までガタガタ震えてくる。
此処から早く退散した方がいいと身体が訴えてくるけれど…動くことが出来なくて。
澱む空気が息苦しい。
「芹霞ちゃん…光ってる…」
恐れ戦(おのの)く**が、指を指したのは石の像。
その目は、血のように赤い――…