シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「大丈夫だよ、そんなもの…慣れるから」

「何があるの、此処に…」


「あれかな…?」


イチルちゃんが指を指した場所。

地面には丸の中に何かの図形が描かれていた。


そこに真上から月の光が差込んでいて、スポットライトのように…照らしていた。


その図形の上に横たわる…

数匹のワンコ達を――…。


裂けた口から舌をべろんと出して、どす黒い身体から、どくどくと赤黒い液体が流れていた。


「ひっ!!? 芹霞ちゃん、おめめ…」


**があたしに縋り付いた。


そのワンコには――

眼球が…なかったんだ。


あたしは思わずぎゅっと**を抱きしめた。

怖くて仕方が無い。


何これ…これは…。


「せ、せせ芹霞ちゃん。ポ、ポチ…あれポチ…」


それは**とふさふさワンコを捕まえた時、


――このワンワン、お目々が青くて綺麗…。


**は首輪に赤いリボンを結んでいたんだ。


それがついていた"ポチ"の目が抉られていて、あたしはひっと短い悲鳴を上げた。


「ああ…ウジガミ様にお供えしたの。綺麗だったからね」


"あそこに"

そう促された場所には、蛇の様な石の像があって。


その前に…お月見のお団子のような飾られていた丸いモノ、それを…イチルちゃんは嬉しそうに見つめていた。


その時、ひらひらと何かが飛んで来て、イチルちゃんを取り巻くように舞った。

黄色い…蝶々だった。


「忌々しい…黄色い色なんて。

私の魔法は…こんなものには解けやしない。

私の魔法は…本当になるものなのよッッ!!!」



そして片手で蝶を掴むと、

ぐしゃりとそれを握り潰してしまったんだ。


「夢には…させないッッ!!!」


鬼のような形相というのは、こういう顔を言うのだろう。


**だけじゃなく、あたしの身体までガタガタ震えてくる。

此処から早く退散した方がいいと身体が訴えてくるけれど…動くことが出来なくて。


澱む空気が息苦しい。


「芹霞ちゃん…光ってる…」


恐れ戦(おのの)く**が、指を指したのは石の像。


その目は、血のように赤い――…


< 603 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop