シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


大きな炊飯器のごはんが炊けた頃、あたし達は全員でおにぎりを作ることにした。


にぎにぎ。

ほかほかのご飯でつくるおにぎり。

あたしだけは玲くん専用ごはん。


「あれから桜ちゃんは?」

「んー、あの後すぐ神崎倒れて車で此処に来たからさ…葉山がまだマンション周辺にいるか、移動したのかすら判らないんだよ」


八の字眉で由香ちゃんは言った。


「百合絵さんは…副団長の姿を見たの?」

「路地裏で後ろ姿をちらりとだけは。それを確かめるよりも、蹲った団長が気になって、触った途端…ぷふ~」


百合絵さん、大きな手で作るおにぎりは巨大だ。

誰が食べるんだろう。


「百合絵さん、傷は大丈夫?」

「ご心配ありがとうございます。切り傷でしたから…。それに、朱貴さんがきちんと手当をしてくれたようですので、もう大丈夫です」

あれだけ血を流していたのに、回復は早いらしい。

絆創膏が…肉に埋もれかけている。


「桜ちゃん…見つけたいな。結構玲くんにやられてたから、今頃痛がっているかもしれないし…、或いはまた…副団長に捕まって操られてでもいたら。正気に戻さないと…。もう玲くんと桜ちゃんの闘いを見たくないよ…」


「そうだよね、ボクもそう思ってさ…昨夜8時頃かな、体育館から帰ってこない師匠に電話したんだよ。そしたら師匠…、」


――さっき体育館に、開けた窓から青い紙飛行機が飛んできてさ…


青い…紙飛行機…?


『桜チャンの居所はまて次号。

今は…FIGHT、一発!!!』


――探すなって念押されたから…連絡を待つしかない。


まあ…蒼生ちゃんなら見つけられるだろうけれど。

桜ちゃん、あたし達と会うまで、自分に負けないで!!


「よし、玲くんの終わり。今度は紫茉ちゃんの作ろうっと。ちょっとごめんね~。しかしそっちは本当に大きな炊飯器だね。業務用なのかな」


にぎにぎ…。


「…なあ…神崎。それ何?」


由香ちゃんの視線の先にあるのは、作り終えたばかりの玲くんのおにぎり。


「何って…おにぎり。玲くん用だよ?」

「………。下膨れ…リスの顔……?」


よかった、判ってくれた!!!


「ミソはね、細かく切ったのりをマツゲにしたてて…。にっこり笑わせたら、ぷっくぷく玲くんそっくりで可愛いでしょ? うふふふふ」


「神崎相手じゃなかったらきっと師匠怒るだろうし、今は…ああ、いやこっちの話。きっと師匠も、治ったこと飛びついて悦んでくれること期待しているだろうし、むふふふふ。師匠が喜んで食べてくれるといいね」


「うん!!!」


途中早口で聞き取れなかったけれど。

何で三日月目になってたのかよく判らなかったけれど。


にぎにぎ…。

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