シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
あたしは、昔からこうしたキャラクターのおにぎりを作るのが好きだった。
昔はよくワンコのおにぎりを作って、一緒に食べたな…。
「……誰とだ?」
自問自答。
あたしは…誰と一緒に、ワンコ型のおにぎり食べたんだろう。
ワンコ…煌とか?
あいつに共食いさせてたか?
――おいしいね、芹霞ちゃん…!!
頭に蘇る声音は…煌ではない。
奴がこんなに可愛く話すわけがない。
じゃあ誰……?
何だか…最近聞いたようなか細い声だけれど。
「ニャア」
考えていると、ぺしっと尻尾で顔面をはたかれた。
「ニャア、ニャア!!」
ぺしぺし。
「何だ、お前は!! お腹減ってるの? じゃあこれ…」
大皿にある小さめのおにぎりをあげると、ぷいと顔を横を向ける。
今度は百合絵さんの作った巨大おにぎりをあげると、またぷいと横を向く。
「何よ、このリスのは駄目だからね!!? このティアラ姫のも駄目だからね?」
「神崎…握っているそれ、ぶちゃいくワンコだったのか!! 食べる気無くす形態のおにぎりだ…」
「ニャア」
「だから手を出しても駄目だって!!」
「ニャア」
「駄目だってば!!」
「ニャア」
「え、作ったものを欲しいんじゃないの? 新たに作れって強請(ねだ)ってるの?」
ぺしぺしぺし。
「神崎……。多分さ、多分だけど…そのニャンコ、自分だけのおにぎりが欲しいんだよ」
「は? クオン用のおにぎり?」
「ニャア」
ふさふさ尻尾がくるくると揺れている。
「え……ニャンコ型のおにぎり…とか?」
「ニャア」
お手までされた。
だからニャンコ型のおにぎりを作ったら、クオンはむしゃむしゃ食べ始めた。
「共食いしているっていう気分にならないのかな…」
「神崎…。恋心が判ってないね…」
由香ちゃんが何かを言って嘆いていた。