シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


そして同時に――

一緒に戦おうねと玲くんに言ったあたしの言葉は反故にされ、玲くん1人が前を駆けて、あたしの前から消えてしまうような…そんな錯覚を覚えてしまって。

凄く寂しく思ったんだ。


何で"消える"ことを不安に思うんだろう。

あたしここまで、ネガティブ思考じゃないはずなのに。


――…ちゃん、だあい好き。


何であたしは、"喪失感"を今から恐れているのだろう?

玲くんと付き合って次の日に。


――ぎゃははははは!!


………。


「………駄目だ、違うことを考えよう」


保健室から体育館まで、あたしをアシに使った"ぐうたら"クオンは、玲くんなど興味なさそうに、あたしの首元に巻き付いたまま、まだおにぎりを食べている。

もう何個目なのか判らない。

保健室で最初の1個を食べてから、大きい炊飯器を素通りして、じっと小さい炊飯器の中身を覗き込んで、何だか不服そうにニャアニャア鳴いていたけれど、


――ニャンコ型のおにぎり作らないよ?


すると、大きい炊飯器の前に黙って座り込んだ。

このニャンコ…『高級米<ニャンコ型』らしい。


――愛情の度合いが比較にもならないからね、むふふふ。


一体、米と形がどんな比較になるのかよく判らない。


そして食べ終わった都度、肉球についたご飯粒を、よりによってあたしの病巣に、何度もなすりつけて落とすという奇行に走っている。


それは、体育館に来た今も同じ。


ぺちん。


数度クオンの頭を小突いているけれど、このネコ…やめないんだ。

どうしてあたしの病巣を弄るのだろう、このニャンコ。


ああ…ご飯粒で、赤い斑点が消えていく。

病状の進行具合が判らないではないか。


気まぐれネコのやることはよく判らない。




暫く皆で突っ立って玲くん達を見ていたが、あたし達に気づかないくらいに集中しているらしく、仕方が無くあたし達は体育館の端っこに体育座りをして見学することにした。


百合絵さんも体育座りが出来るらしい。

多少…息を乱して転がるようだけれど。

つかえるお腹を引っ込めている時間が辛いらしい。


大変そうだな。

あたしも、ダイエットして…お腹のお肉落さなきゃ。
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