シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
ガラガラガラ。
「あれ…芹霞じゃないか!!」
玲くんや紅皇サンより早く、あたし達の存在に気づいてくれたのは紫茉ちゃんで、恐らく隣の準備室から出した…テニスボールが入った大きなカゴをガラガラ引いて、テニスラケット1本を手に抱えてやってきて。
一式を紅皇サンの脇に置くと、破顔してこちらに近付いてきた。
「玲、余所見をするなッッ!!!」
「はいッッ!!」
その声で気づいたらしい玲くんが、紅皇サンに怒られてしまった。
あうっ、邪魔してごめんなさい。
「芹霞大丈夫か? 胸は痛くないか!!?」
「うん、大丈夫。心配ありがとう。あたしは元気!! そうだ紫茉ちゃん、朝ご飯のおにぎり作ってきたよ!!」
「ティアラ姫じゃないか!!! 食べたい、食べたいッッ!! 皆で食べようか!!」
「はい、じゃこれ七瀬のお茶。お疲れさま」
「ありがとう、由香。百合絵さんも食べよう。え? メイドだからって何遠慮するんだよ。別に一緒に食べるくらいいいじゃないか。ほら、芹霞も由香も頷いているぞ?」
「皆さん…ありがとうございます、ずごっ」
ピクニック気分で盛り上がるあたし達。
「紫茉、黙れッッ!!」
「すまない!!」
代表して紫茉ちゃんが怒られてしまった。
紅皇サンは凄く厳しい。
あたし達は小さくなって、片隅に固まりながら…作りたてのおにぎりを頬張る。
「おいしいぞ、芹霞。味もいいし、ティアラ姫もうまい。さすが芹霞だ」
「えへへ。愛情込めたよ?」
「それは嬉しいな」
「うふふふふ」
ああ、紫茉ちゃんに喜んで貰えて嬉しい。
この笑顔見てると、凄く胸がきゅんきゅんする。
「百合絵さん…。師匠の姿は見えないけれど、痛いくらいの嫉妬の視線だは感じるんだよね、このラブラブ百合カップル付近に」
「ああ、坊ちゃま…。背中に肘撃ち…」
「玲ッッ!!!」
「うっ…。す、すみませんッッ!!」
そんなこと露知らず、
「芹霞、もう1ついいか?」
「いいよいいよ、はい!!」
あたし達はほのぼの。
にっこり微笑みあって"うふふ"&"あはは"の世界。