シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


何から何まであたしのド・ストライクのまま、両手を広げて"ウエルカム・カモン"状態のあたしを置き去りに、なぜか逃げてしまうウサギさん。


「いやん、待って~」


思わず窓から飛び出そうとした時だった。


「フギッッ!!!」


首元のクオンが興奮したような声を出して、あたしの頬にネコパンチ食らわせると、するりとあたしの首から離れて、代わりにウサギさんを追っかけたんだ。

出端をくじかれたあたしは、窓から身を乗り出して叫ぶ。


「クオン!!? 戻って来なさい、クオン!!?」


ウサギさんが脱兎の如く逃げていく。

それをふさふさネコが追いかける。


………。


クオン、まさかあのウサギさん食べようとしてないよね?

そこまで狩猟本能に長けた、肉食動物じゃないよね?

ネコはそんな動物じゃないよね?

食べるの…ネズミだけだよね?


………。


「気まぐれだから、すぐに戻ってくるだろ……っくしょん。ああ、寒。ちょっとだけ窓閉じよう」


窓を閉めても身体が冷えてしまって、寒くて寒くて仕方が無い。


「よし、クオンを待っている間、身体を動かして修業だ!!!」


また始めた…煌の真似事。

鈍(なま)った筋肉がぷるぷるして、後日筋肉痛間違いないだろうけれど。

後で紫茉ちゃんに、何か攻撃の1つでも教えて貰うことにして、今は1人で基礎鍛錬。


頑張れ、あたし。

目指せ、強い"彼氏サン"の"彼女サン"。


素人女に今できることと言ったら、真似事から入る基礎鍛錬しかないから。


その時だったんだ。



「まるでなってないな。

教えてやろうか、俺が」



振り返らずとも判った。

その声の主は。
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