シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「芹霞。僕が今…次期当主になっているのは、大切な者を守る為に必要なものだからだ」
端麗な顔は真剣で。
「守る為なら…僕は虐げられることは構わない。慣れている。本当はこんな姿、君には…見せたくなかったけどね」
微苦笑するものの、それを恥じていないかのようにどこまでも毅然としていて…その悠然とも思える様に、誰かを思い出しかけたけれど、すぐに消えてしまった。
「だったら…。紫堂櫂が生きていたら、玲くん…肩書きどうなっちゃうの? 今それが必要なんでしょう? だから次期当主してるんでしょう?」
「君は…次期当主じゃない僕は嫌い?」
困ったように笑う玲くん。
玲くんは…紫堂櫂に肩書きを移譲するつもりなんだろうか。
最初から…?
紫堂櫂を守る為に…次期当主になったとか?
そこらへんの事情はよく判らないけれど。
普通…肩書きは自分の為にあって、人の為にあるものではないと思う。
何故か…そう頑(かたく)なに信じる自分がいるんだ。
「玲くんは…優しすぎるよ!!! もっともっと我儘になろうよ!! 何自分の従弟に遠慮しちゃってるの!!?」
思わずあたしは玲くんに怒ってしまった。
玲くんが…"我慢"し続けている現状。
あたしは、玲くんを解放したいのに。
「僕は――我儘を通り越した、
ただの女々しい気狂いだよ」
あたしとは対照的に、玲くんは穏やかな物言いで。
「僕は…元から次期当主の器なんてない」
「そんなことないって!! 玲くん卑屈すぎッッ!!!」
「本当のことだ。だからこそ…僕は強くならないと。
そんな外面的な権威(ステータス)頼らずとも、君の…恋人として相応しくなる為に」
玲くんの顔は真剣だった。
「誰からも…僕だから仕方が無いと思って貰えるような、そんな強い男になりたいんだ。君を…他の奴に奪われたくないから。
正々堂々と…君の隣に立ちたい」
切ない顔。
切ない口調。
「僕は――夢で終わらせない。
君と…僕は始まったんだ、現実に。
だから…終わらせたくない」