シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「俺は――お前に巻き付く全ての"いばら"を無効化出来る。

だからお前の心は…"足手纏い"の玲を弾くだろう」



何、その自信。

あたしの心はあたしがよく知っている。


玲くんは、あたしが選んだ人だ。

玲くんがあたしを突き放すことがあっても、あたしは玲くんから離れない。

だからこそ、あたしだって強くなろうとしているんだ。

共に、走るために。



「玲の元では、お前は走れない」

「黙れ!!!」


パシン。


あたしは咄嗟に平手打ちを見舞う。


久涅は一瞬翳った顔をして俯いたが、それは刹那の時間のこと。

ぎらりとした切れ長の目があたしに向いた。



「憎悪でもいい、俺を受入れろ。

"約束の地(カナン)"での時のように、"俺"を見ろ」



あたしを射貫くような漆黒の瞳。


深い深い闇の色が、あたしをその色に染め上げようとする。


闇。

闇。

何処までも漆黒の闇。



「櫂の立ち位置に…

玲ではなく俺を入れろ」



……違う。


この漆黒色は闇の色ではない。

まとわりつくこの闇は…ただの"孤独"の色。


「俺を…選べ、芹霞」



あたしは、真なる闇の色を知っている。

あたしは闇という存在を知っている。


この男の持つ色は――



「"真似"しないで」



贋物だ。



「俺が"真実"だ!!!」



久涅が、恫喝のように声を荒げる。



「俺を…よく見ろ!!!

俺はお前の敵じゃない。

俺をもう拒むな!!!



俺は、俺は――!!!!」






「何だっていうんですか? 久涅さん」




愉快そうな声。

振り返れば、いつの間にか窓に寄りかかっている――



「計都……?」



オッドアイが、こちらを冷めた顔で見ていた。




◇◇◇


《UpperWorld007》
< 622 / 1,366 >

この作品をシェア

pagetop