シンデレラに玻璃の星冠をⅢ



「写真に…収めましょうか?

永遠なる"美"を…」


そんなことを提案した櫂は、iPhoneを取出して、緋狭姉に見せた。


「おお、写真か!!!

それはよい、アオに自慢してやろう」


うわ…。

その姿、残すんだ…緋狭姉…。


「それでは、失礼致します」


櫂がiPhoneを構えて、写真を撮ろうとした時。


「折角なら、撮影は"自動"にして…下僕共、お前達も来い」


下僕……。


「何だ、不服なのか、オレンジ下僕」


………。


もう…何でもいいや。


我らが女王様万歳。



撮れた写真は、櫂がニノを呼び出し、緋狭姉の言うアドレスに添付送信したらしい。


"aoao@ares_ioa.com"だそうだ。


――"ares_ioa.com"?


少し、櫂が考え込むような素振りを見せて、


――まあ…虚構だから…。


そう1人薄く笑っていたけれど。


「さて、坊。私は気分がよい。

1つだけ望みを叶えてやろう」


緋狭姉はそう言った。


「何を望む? 何でも叶えてやるぞ?

私に…不可能なことはない」


そう艶然と笑う緋狭姉の言葉は…


「お前が今、一番願うことを叶えてやろう」


まるで誘惑のように。


「願うこと…」


櫂の顔に、惑うような何かが走る。


櫂が願うこと。

そんなのは1つだ。


12年間、願い続けていたもの。



「だったら俺は――」



櫂は言ったんだ。



「胡桃(くるみ)を」



あ?



「胡桃?」


流石の緋狭姉も驚いたらしかった。


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