シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
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崖道をひたすら駆け戻る俺達。


――お知らせします、皆様。


突如入った、ニノからの通達。


3ゲーム合計1時間以内で、アホハットの元に戻らねばならない強行軍だったはずが、何処かのチビリスが不本意な不戦勝をやらかしてくれたおかげで、10分の時間延長が"主催者側からのお詫びボーナス"された。

おかげで帰り道は時間に余裕ができた。


――さすがは僕だねッッ!!!


アメに続き胡桃カリカリの屑までも、積もり積もった俺の頭上。

どんな状況になってるんだ、俺の頭。

見たいようで…怖くて見たくないような。


勝手に人の頭に居座って、何を偉そうに当然のように、堂々カリカリしているのかとも思うけれど。


結局は――

櫂の采配で、結果上々。

櫂のおかげで、リスの機嫌上々。


本当に櫂様々だ。


少し前まで、てんで思いつかなかったこの結末。

今となっては、全てが俺達にとって良い方向で丸く繋がっていたようにすら思えてくる不思議。


だけど小猿の消沈は半端無く。

まあ…1人で抱えて、守ってきたゲームだからな。


それでも櫂に聞けば、劇的な力を発揮したとかで、それだけでも…小猿にとって成長も出来たし結果オーライだったんだと、そう笑って肩を叩いて励ませば、泣きそうな顔でぎこちなく笑って。


――中途半端に男になりかけて、結局消化不良で終わった俺って…オカマみたいで…葉山に嫌われそうだ。


………。

こいつ、頭の中…桜のことしかねえのかよ。

"オカマ同士お似合いだ、気にするな"

とは…さすがに口には出せなかったけれど。


帰り道中、櫂は何故だかチビリスをちらちらと見ては、深刻そうに何やら考え込んでいた。


――僕の胡桃はあげないからねッッ!!!


誰がお前の胡桃を狙うかよ。

あさって方向の勘違いリスが、頭上から騒いだけれど…


――此処の世界は…。


そう言って、また考え込んでしまう櫂。


このハチャメチャな世界について、考えていたんだろう。

全てのゲームの舞台となったこの場所は、裏世界に続くモノだというのなら、此処もこの先の裏世界も…一体何処にあるどんなものなのか。


いるはずのない奴らがいる世界。

ありえない奴らがいる世界。


俺達の記憶が影響し、再現出来る不可思議な世界。

現実世界と酷似した、だけど現実ではない疑似世界。


たかがゲーム、されどゲーム。


俺達は五感をフルに働かせられて、ゲームごとに色々考えさせられて。

色々追い詰められながら、結果的には…精神や肉体を少しずつ鍛えられていたような気がする。

それは偶然の産物なのか、それとも…必然の事象だったのか。

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