シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
答えのでない答えを延々と考えていれば、やがて見慣れた分岐点が視界に拡がってくる。
「お帰り~」
待ち受けていたのはアホハット。
「「「………」」」
その姿を見て――
俺達は3人、項垂れた。
脱力したという表現の方が正しい。
安堵感に気が緩んだ…とかいう類では決してねえ。
忘れていた"シビアな現実"を思い出したというか…。
「なんやなんや!!? 人の顔見てなんや!!!?」
口をむにゅうとひん曲げて、ご機嫌斜めのアホハットの上には…
ピコン帽子。
忘れてたんだ。
最後にこれで答えなければならなかったこと。
屈辱、恥辱。
絶対こんなの被って答えたくない俺達と、答えて貰いたいらしいアホハット。
その温度差は激しく――
さらにクマまで俺達に羨望の眼差しを向けてきて。
このおじさん'Sとは趣味が合わねえことは間違いなし。
「とりあえず、最後の封筒…おおきに」
櫂から手渡された紫の封筒の中身を確かめ、アホハットは頷いた。
そして、俺達に向き直ると、
「よし、これで全部揃いましたな。さてさて、これが最後の問題や。中身を読まれるがええ」
おちゃらけた軽い表情を消し、真面目な顔したアホハットは、俺達が集めてきた全ての封筒を差し出して言ったんだ。
…ふざけた、ピコン帽子を被って。
「これに正解したら、皆はん方は…裏世界の深層に行くことが出来る。けど間違うたら……」
「「「間違うたら……?」」」
俺達は固唾を呑んで身を乗り出して。
「強制退去」
クマも頷いた。
まるで最初からの取り決めだったかのように。
「んなもん聞いてねえよ!! それに此処までやってきて、最後間違えたら…意味ねえじゃねえか!!!」
思わず俺は叫んでしまった。
「そうや。チャンスは1回限り。このチャンスをモノに出来るか出来ないかは、皆はんにかかっている。なあに、簡単な問題や。きちんと"こなして"きたのなら、答えなどすぐ出てくるやろ」
固い顔をした櫂が、封筒を3つ受け取り…中に入ってる白い紙を取出した。
ガサリ。
俺達は雁首揃えて、その紙を覗き込む。
俺の頭上のチビは、ずっとカリカリに勤(いそ)しんでいて、見ているのかどうかは判らねえし、答えるだけの頭はないだろうから…無視だ無視。
合計3枚の紙に書かれていたのは――
『1.このゲームの意義は何か』
『2.ゲームの舞台となった此処は、何処か』
『3.イケメン情報屋は何者か』
「「「………」」」