シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
櫂は苛立ったようにさらさらとした前髪を掻上げると、大きく溜息をつき…そして腰に両手をあてると、更に大きな溜息をついて嘆いた。
「さすがの俺も、羞恥心というものが酷くてな。だけど答えねばならないのなら、どうしようかと」
………。
「櫂……お前。今まで、そんなことを真剣に悩んでいたのか?」
「あ、ああ…そうだけれど? "そんなこと"とは酷いな、重大な問題だろう、これは」
「だけど答えの方が重大だろうが!! 答えは判ったのか、全部!!?」
「ああ」
簡単に、本当に簡単に断言してくる櫂。
「本当の、本当にか!!?」
「本当の本当だ」
………。
頭のいい奴は、とことん俺とは違う頭の構造をしているらしい。
答えを閃くように得てしまえる櫂が悩むのは、そんなこと?
いや…確かに、矜持的には深刻な問題ではあるけれど。
櫂は言葉を続けた。
「ゲームの帰り道中、実は考えていたんだ。このゲームの"共通項"を思い返せば、結論は…そこに至るなと。それが最終問題とは…ある意味、ラッキーだったかも知れないな」
そう嬉しそうに櫂は笑うけれど。
俺だって、同じ時間に、同じこと考えていたよ。
だけど俺にとっては難解すぎて、問題にされたのはアンラッキーとしてしか、思えねえんだけれど。
櫂の頭は、"共通項"をキーワードにして解いたというのなら、そのキーワードを手に入れた俺達は櫂と同じ結論に行き着くものか?
俺と小猿は思わず顔を見合わせ、そこから知恵をひねり出そうとしてみたけれど。
「共通項は…"ゲーム"だよな?」
「うん。"ゲーム"しかないよね」
「それ以外に共通項はあるか?」
「いや、"ゲーム"だけだよ…」
一応…頭の上に居座っている奴にも聞いてみようと、人差し指でちょんちょんと突っついみた。
「おい、(あまり期待はしてねえけど)お前はどうだ?」
「胡桃ッッ!!!」
………。
カリカリしか頭にねえ、脳天気リスはやっぱ"戦力外"。
そんな俺達の様子をにやつきながら眺めている、ピコン帽子を被ったアホハットと、帽子から垂れたスイッチを押して、ピコンピコン煩く遊ぶクマ。
『1.このゲームの意義は何か』
『2.ゲームの舞台となった此処は、何処か』
『3.イケメン情報屋は何者か』
切り抜けてきたゲームの"共通項"が、何で最終問題となる…"意義"と"場所"とアホハットの正体を特定出来るか、俺には判らねえ。
そしてやはりどう考えても共通項は"ゲーム"としか思えねえんだ。
だけど、いかに愚鈍な俺にだって判るよ。
問題文にもわざわざ書かれている"ゲーム"という単語が、答えになるわけがねえことは。
書かれてあるということは、先に否定しているということ。
そして櫂が思う"共通項"は、"ゲーム"などではねえってことに。