シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
カリカリカリカリ…。
ピコン、ピコン。
「………」
カリカリカリカリ…。
ピコン、ピコン。
「うるせ~ッッ!!!!」
カリカリカ…。
胡桃の音が止まった。
そして――
「お前の方こそ黙れよ。静かになっても判る頭なんてないくせに。僕はね、お前みたいな注意散漫な奴じゃないんだ!!!
一生懸命、芹霞への求愛の胡桃に、僕の愛を込めているんだ。お前こそ、僕の邪魔するなよッッ!!!」
カリカリカリカリ…。
ああ…益々煩くカリカリ始めた、このチビリス。
ピコンピコンは止まる気配がねえし。
そんな騒がしい中、幾らどう考えども、答えらしい答えは出てこねえ。
出て来るのは"うんうん"という苦悶の声だけだ。
「「頭がショートする~」」
小猿の声と重なれば、苦笑した櫂が俺達にヒントを与えた。
「悩まされてきたじゃないか、その"共通項"で」
悩まされた?
ゲームの最初はイロオニで。
次はチビリスとふさふさ猫。
その後は8年前の出来事で。
最後は…筆記問題とテトリス。
悩まされた共通項…?
「緋狭姉とか、氷皇とか?」
櫂は首を横に振る。
「虚像は使い回されても、全てのゲーム通じ、"形態"が等しい現れ方をしていない」
そうだよな、敵だったりアナウンスだったり。
で、緋狭姉と氷皇は…同時に2人姿を現してねえし。
その時、小猿が神妙な顔をして言った。
「…速さ?」
「それは表面的な部分だけだ。だけど大分近くなった」
速さ…に近しいもの?
櫂は、アホハットに交渉を持ちかけた。
「1つ提案なんだが…」
「なんや櫂はん?」
櫂はアホハットの帽子を指さす。
ピコン、ピコン。
クマに弄られるがままに、ハテナマークが忙しく動き続けている。
「それ…被らなくても「嫌や」
アホハットは、ぷくうと頬をを膨らませた。
「ひーちゃん、折角用意したんやから、使うてくれないと嫌や、嫌や!!!」
ピコン、ピコン。
………。
何処の…ガキだよ、このおっさん…。
櫂は悲壮感漂う顔で、深く考え込んだ。
そこまで深刻な問題らしい。
櫂は、この帽子を被るのがお気に召さない。
俺の自慢の幼馴染は、意外な弱点克服に懸命だ。
退路を断たれて、どう回避策をとるつもりなんだろう?