シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


想像してみた。

すました顔をした櫂の頭に…ピコン。


………。


………悪い。

俺…平然と見守れねえや。


かと言って、俺だって被るの嫌だし。

護衛役でも幼馴染でも…出来ることには限界がある。


何であれを良しとするのか、おっさん達の考えは判らねえ。


若い世代はとことん拒否したい代物だ。

小猿だって嫌悪感に顔を歪ませて、俺達が顔を向けただけでも…ぶんぶん頭を横に振っている。


「俺だって嫌だよ、あんなの!!! 末代までの恥だ!!!」


問題の答えよりも、遙かに厄介な問題を抱える羽目になった。

答えが判っても、ピコンをしない限りは、先には進まない。


どうする、櫂?


考え込んでいた櫂は、鋭い切れ長の目をアホハットに向けた。


「……回答者と、帽子を被る者は違ってもいいのか?」


…………。

おい、櫂。


「本当は嫌やといいたいけれど…このままでは埓あきまへんし。…判ったわ。3つのゲームクリアのご褒美として、その条件呑みましょ。回答者とピコン帽子被る者は別々でええ。けど、被った者は自分でピコンまではせなあかん!! それだけは絶対譲れへん!!!」


ああ…なんて帽子だ、ピコン帽子。

この場面の主役は、間違いなくお前だ。


「ふう…。これで何とか進めそうだな」


そう安堵の溜息を吐き出した櫂は、


「さて」


何故か俺の頭を真っ直ぐに見ると、


「被って貰わないとな」


不敵に笑った。



………。


「櫂、何で俺見るよ…?」

「消去法だ、仕方が無い」


………。


俺…?

え、俺!!!?


俺があのヘンテコ帽子被って、ハテナを立てるのか!!?


マジか?

マジなのか!!!?



「これが一番の…良策だ」

「ちょっ…櫂、待てよ、なあ…!!」


超然とした笑みを浮かべて、一歩俺に近付く櫂から、俺は一歩退いて。


「煌、逃げるな」

「逃げたくなるだろうがよ!!!」

「俺達、幼馴染じゃないか。しかも仲がいい」

「それなのに、お前何で…消去法で俺残すよ!!?」

「煌…別に取って食おうとしているわけじゃない。俺を信じて…こっち来い?」

「明らかに取って食おうとしてるじゃんか。俺行かねえ」

「…そう言わず。大丈夫だから、こっちに来い?」

「大丈夫じゃないから、やだ」


「ワンコ、がんばれ~」


人に災厄を押し付けて、完全他人顔で笑う薄情小猿は、俺にひらひらと手を振って、俺を助けようともする気がないらしい。


「櫂、別に小猿でも…「適任は、翠じゃない」


櫂の視線は、俺から外れねえ。


「煌。帽子を被らねば、先に行けないんだ」

「んなこと判ってるよ!!! けど…嫌だ!!!」


俺は…走って逃げた。


櫂は大好きだけど、こればかりは見逃してくれ。
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