シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


駄目だ、耐えられねえ!!!

あんなの被ったら"漢(オトコ)"じゃねえ!!!


俺は強い"漢(オトコ)"になりてえんだ!!!

あんなの平気で被れる"漢(オトコ)"にはなりたくねえ!!!


俺にだって、矜持はあるんだよ!!!


だけど櫂が追いかけてくる。

俺は逃げる。


鬼ごっこだ。

何で俺、櫂と鬼ごっこするよ!!?



そして――


「お前…風の力使うなよ!!!!」


纏わり付いた風が…

強制的に俺を櫂の元に引き戻してしまったんだ。


「仕方ないだろう? 非常事態だ」


しれっと言いのけた櫂は、


「煌、動くなよ?」


俺の頭に手を伸して――…


もそっ。


…ん? 何だ?


「何するんだよッッッ!!!」


途端、響いたのは怒号。

俺の頭上に住み着いた、玲の声したヘンテコ生き物が叫んでいる。


櫂は…俺の頭上から、胡桃を掴むとぽんと遠くに投げたんだ。



「胡桃…

僕の求愛の胡桃ッッッ!!!」



悲痛な声を響かせて、俺の頭上から飛び降りる下膨れリス。

コロコロ転がる胡桃を全力で追いかけ、ふさふさ立派な尻尾を大きく揺らして走るリス。


そんな時――


「あ……」


声を上げたのはアホハット。


アホハットの頭にあった帽子を、櫂が掴むと…そしてこれもまた、ぶんと投げたんだ。

チビリスに向けて。



「胡桃、僕の胡桃…みつけ…えええ!!?」



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帽子は胡桃を手にしたチビリスの上にて落下し、チビリスの身体をすっぽりと覆い隠してしまった。


もぞもぞ、帽子だけが気味悪く…スローに動いている奇妙な風景。

そしてそれは力尽きたように動きを止めると…何か小さいモノが帽子のつばよりはみ出た。


ぷるぷる震えているのは…手?


「真っ暗で…臭くて…暑くて…僕…死にそう…」


息も絶え絶えの声。


やば。

このままではあいつ、本気に死んじまうんじゃないか!!?
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