シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「臭いなんて、失礼やないか!!!」
アホハットの声は…無視だ、無視。
そして櫂が叫んだ。
「レイ、がんばれ!!! もう少し手を右に動かせば、帽子が動いて外に出てこれる!!! そんな加齢臭とはまるで違う、新鮮で綺麗な空気が吸えるぞ!!!」
「櫂はん、加齢臭ってなんや!!! ひーちゃんはまだまだ若くて、ひーちゃんの頭は新鮮で綺麗な、フローラルの匂いや!!!」
やはりアホハットを無視して、ひたすら親身にチビリスを励ます櫂こそが、チビリスにとっての災厄をもたらした元凶なんだけれど。
「判ったッッ!!!」
やはり、判ってねえチビリス。
おかしなところ素直だから、そのまま櫂の言葉通り、その手を右に移動させ…
「そこで思い切り、叩け!!!」
「判ったッッ!!!」
素直に元気に従えば…
ピコン。
「………」
そう。
チビリスの移動した手は――
ピコン帽子のボタンにジャスト。
そこに…櫂の言葉通り、迷い無く小さな手を叩き付ければ。
帽子には、ハテナマークが立つ…わけで。
「………えげつねえ…」
思わず俺は、櫂に向けてその言葉を漏らした。
「まあ…従弟だしな…」
櫂は満足そうに笑って、アホハットに振り返る。
「レイもこっちの戦力、仲間だ。
レイが帽子を被って、自分でボタンを押した」
チビのことを、勝手に"戦力外"だと排除しようとしていた俺とは違い、方法はどうであれ…櫂は初めからチビを戦力としていたらしい。
「文句は…言わせない」
場に、びりびりとした凍気が走る。
「判ったわ、もう……」
がっくり項垂れたアホハット。
「けど解答間違えてたら、あの帽子被ったまま…ここから出て貰いまひょ」
一瞬、櫂が固まったけれど。
「間違わなければいいだけだ」
超然とした笑みを顔に浮かべた。
そこまで答えに自信があるのか?
「では、答えて貰いまひょ、櫂はん。
まず、『1.このゲームの意義は何か』」
そして櫂は答えた。
「時間を…狂わせること」
と。