シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
そんな中、情報屋はにやりと笑い、試すように言った。
「つまり時間とはなんや?」
"時間"がキーだったことに、否定はされない。
「時間は…個人の感覚によって左右されるもので、"絶対的"なものではない。時間はあくまで"概念"だ。
だから…個人によって、動かない時間もあれば、進みすぎる時間もある。体内を含めた"時計"はただの指標。勿論ニノもそうだ。それに人間が乗っかり従っているだけであり、それらは"真実"ではない」
それに対して是も否もないまま、また情報屋の問いは続く。
「このゲームの意義が、"時間を狂わせること"であるならば、ゲームに勝利することは…どないな意味を持つ?」
俺は言った。
「ゲームという…時間を制すること。いや…制御(コントロール)すること、かな」
「ワンコ…。ゲームはゲームだよな?」
「おう…。ゲームだよな…」
「犬~!!! 猿~!!! だから…その手をどけろよ、僕が出れないんだ!!! 窒息、窒息する~」
「ふむふむ。では櫂はん、第2問目や。
それを踏まえた上で…『2.ゲームの舞台となった此処は、何処か』」
正否通告は後回し、今は俺の意見を聞きたいと言うことか。
"それを踏まえた上で"。
つまりこの最終3問は繋がっていると、暗に言っているようなものじゃないか。
この誘導的な質問から推測するに、恐らく真に引き出したい言葉は…この3問それぞれの答えではないのだろう。
この3問の回答は…それを導き出す、ただの餌(ヒント)。
面白い。
乗っかってやろうじゃないか。
俺はすうっと息を吸い、吐くと同時に言った。
「概念である"時間"を制御できるものは、ただ1つ。
それは…"心"だ」
「ほう……?」
クマが腕組みをしながら、顎鬚を撫でている。
「これらのゲームの…第二の共通項でもあった。ゲームの舞台は…俺、もしくは煌の記憶が舞台となっている。
そして、時間というゲームを突破する鍵は、それぞれに"心"だった。心の持ち方による、自分の建直しを求められた」
「即ち、このゲームの舞台は?」
情報屋が俺を見据えて言う。
それは呼吸をするように自然でありながら、他者を意識的に抑えつける…強者の威圧感。
淡々と…といより冷ややかなこの類の威圧感は、俺は感じ慣れている。
やはり…そうか。
情報屋も"そう"なのか。
「どや、櫂はん。具体的に此処の場所は?」
俺は…その突き刺すような視線に負けじと、ゆったりとそれを受け止め、そして言ったんだ。
「此処は――
"明晰夢"の中」
と。