シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「「夢~ッッッ!!!?」」
煌と翠が叫んだ。
「た、確かに何でもアリだけどよ、こんな…玲の声した非常識下膨れリスだって、現実には居な…あ? ああああ!!!?」
自力で…匍匐(ほふく)前進するように脱出してきたレイに向けて、煌が指をさしながら飛び上がった。
「リスだけど、リスじゃない!!!」
翠も同様に飛び上がる。
「ふぅ…ふぅ…。疲れた……」
ゆっくりと…ふらつきながらも、こてりと仰向けになったリスの顔は。
「ふぅ~。空気、空気、僕の空気~。死ぬかと思った…。す~は~す~は~」
深呼吸をしているらしい…レイのその頬は…。
「おい、チビ…ほっぺどうしたよ!!!?」
「あのぷっくり…帽子の中に落したのか!!?」
今までの"あからさま"な下膨れではなく、普通の…小リスのものになっていたんだ。
「僕のほっぺが…落ちるわけないじゃないか。常識的に物事を考えろよ。だから犬も猿も…動物は考えなしで嫌なんだよ。
あの地獄の三重苦で、げっそりしたんだよ、僕は。こんなに…痩せてしまった。僕…王子様なのに貧相に…なっちゃった。…しくしくしく」
レイは頬に小さな手をあて、そのつぶらな瞳からは大粒の涙がぽたぽた落ちた。
「ワンコ…この泣いているリスを見て、何かこう…ぐっと胸に詰まるものがあるんだけれど、ここは突っ込む処なんだろうか…」
「ん…言葉的におかしいからな。ここは一応突っ込むか…」
「何だよ、他人事のように!! 犬も猿も…あの三重苦体験してみろっていうんだよ!!! 臭い、暑い、息が出来ない…ううっ…辛かった…」
しくしくしく。
「本当に…辛かったんだから…」
横にごろんと転がったレイは…ぽろぽろ落ちる涙を、何度も小さな手で拭っている。
「おい、そんな泣くなよ…。そうだ俺…ちょっと待ってろよ」
翠が同情するほど、レイの落ち込みようは酷く。
見事なふさふさ尻尾が、元気なく地面に垂れたまま。