シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
とろりとした鳶色の目が嬉しそうに細められる。
さらさらの髪が揺れ、そしてあたしの横に沈んだ。
耳元に聞こえる玲くんの声。
「ねえ…何を照れてるの…?」
吐息のようにも思える甘い囁き声に、更に意識して鼓動が早まってしまった。
「そうだよ…僕は…君に初めて告白したんだ。
好きだから付き合って欲しいって。
そう…皆の前でね…。照れるのは…僕の方じゃないか…」
ふぅっと耳に息をかけてくる。
ぞくりとして身震いすると、くすくす笑い声が聞こえた。
「僕…今までもっと君にストレートに愛の告白してきたつもりだったんだけれど…。もっと色々してきたんだけれど…その時は平然としてたよね。
何処の部分で照れちゃったの? 教えて?」
わざとだ。
絶対わざとだ。
「君の弱いトコ…教えてよ?」
耳朶に熱い唇で吸い付かれ、思わず変な声を出して飛び上がってしまう。
何すんですか!!!
「ん…耳がいいの…? …攻めていい?」
ひいいいいい!!!?
念仏念仏…鼻血がでそうだ。
「ご……50人は居たね…」
何とか、玲くんの意識をそらそうと呟いた。
「観客(ギャラリー)…」
すると、玲くんが固まったように思えた。
「50人? え…? 10人…居なかったじゃないか」
驚いた顔が上げられた。
妙に声が強張っている気がする。
「警護団の皆…聞いてたよ。目、合わせてくれなかったもん。その…キ、キスのとこまで…」
「だけど…数人じゃ…」
「玲くん…だから合わせて…うん、100人まではいかないけど…。きっとこの紫堂本家で知らない人は居ないね…」
「………」
玲くんは起上がって、くるりと背を向けた。
「うわ…。そこまで公開…羞恥プレイ…」
何やら、ぶつぶつ聞こえてきた。
玲くんは…公共電波でウェディング姿のあたしに愛の言葉を贈ったのは、特に気にならないらしい。