シンデレラに玻璃の星冠をⅢ


「緑皇!!!?」


煌が興奮に裏返った声を出した。


「櫂、五皇は偉いんだぞ!!? あの胡散臭い青い男だって、下ネタ大好き緋狭姉だって、尋常ではない威圧感があんだぞ!!? このアホハットの何処に威圧感があるよ!!?」


「そうだよ、こんな怪しい関西弁もどきの変人なんて、情報屋止まりだよ!!!」


そして2人は口を揃えて。



「「こんなのが五皇なら、

――東京はおしまいだ!!!」」



「酷い云われようや…」



そう嘆く姿勢見せながらも、否定はしない情報屋。


「感じなかったのか? 本当に…」


俺は煌と翠に訊いた。


「いつもの軽薄な顔とは違う、別の顔を」


そういうと…煌と翠は顔を見合わせて、


「なあ、小猿。関西弁じゃねえ時…」

「俺もそれ思った」


端的な言葉で、思い当たる節があったことを告白した2人。


関西方面の様々な訛(なま)りが混在して変だとは思っていたけれど…素性を隠すための偽装(カモフラージュ)か。

五皇は、東京に座す元老院の守護が主な仕事。

標準語を話す時が"別な顔"であるというのなら、五皇時は訛(なま)りはない言葉遣いが普通なんだろう。

言葉遣いからだけでは、情報など出てこない。

ましてや、それが秘匿主義の五皇であるならば。


「ひーちゃんに五皇の威圧感があると言わはるんか? 光栄や~」


あくまで軽口で、しかし情報屋の顔は満足そうで。

否定する要素を何も見せず、動揺1つしないその様は…その考えに至った理由を説明でもしろといいたいのだろうか。


「櫂、どう見ても…こいつ、五皇とは思えねえよ。つーか、氷皇は青色、緋狭姉は赤色。白皇は…まあ爺さんだから白髪…って言っていいのか、で黒皇が久涅なら…お前と同じ黒色を纏っている。

五皇は色がついて、自己主張が激しい奴ばかりだろう? アホハットも自己主張は恐ろしいくらい烈しいけどよ、一体何処に緑色があるよ? 名前でもねえだろうし」


「煌、自己主張が烈しいのなら、至る処に緑の軌跡はあったんだよ。まずは最初の、俺達が目覚めた場所。まずあの…"明晰夢もどき"からして、情報屋の秘めたる力を最初から暗喩して誇示してる。そして夢という幻影が解けた後に…草原が拡がっていただろう? 辺り一面、緑色の」


情報屋の行動が必然というのなら。

その支配下にある世界の全ては、意味がある。


草原に出たのは…偶然ではない。

草原にしないといけない理由があった。

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