シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
ただ…異質さを感じているのは俺だけではないはずだ。
俺より昔から付き合いがあった玲とて、それは感じているはずで。
むしろ、気づかないはずはない。
それでもその"何か"を追究せずに、ギブアンドテイクと割り切った上での信頼関係を築いている玲。
ドライな関係と思えば、玲が私情を吐露する間柄。
玲の警戒心を和らげるのは、どんな理由からか。
玲の信用を勝ち取り、氷皇が"使う"だけの、機械に関する技術力…プラスα。
そのプラスαが…俺は見定めることが出来ない。
「……仮に。この情報屋が五皇の1人である緑皇であるとして」
ふと我に返れば、クマの視線が俺にあった。
クマは俺に言った。
「彼が"力"とやらを使ってまで、連れて来ようとしていた"裏世界"とは、どういうものだと?」
一瞬――
隣に立つ情報屋の瞳に、鋭い光が横切ったのを俺は見逃さなかった。
それが…本題なのか。
つまり、今まで全てが…布石だと?
必然によって導かれたのは――
"裏世界"。
「………」
"裏世界"――…。
表世界からは完全に隔離され、何処に広げられた世界であるのかも判らず、しかし…出入り出来る者は存在している、情報の宝庫たる世界。
行き方も場所も判らないから、俺達は…緋狭さんの言葉通りの案内人についてきたんだ。
裏世界に行き着くまでは情報屋の案内。
裏世界に入ってからは、クマの案内。
そういうスタンスで、俺達は此処に来た。
裏世界に行き着くまでの方法は複数あり、あの喫茶店での襲撃によって…今に至る方法を選んだのだと、先に情報屋は口にしていた。
他にも…裏世界に至る道はあるらしい。
現に、裏世界に出入り出来るらしいクマは、違う方法で行き来しているはずで。
それでも緋狭さんは、案内人に情報屋を選んだ。
五感を狂わせながら、夢という…人の意識の内部に連れられるのが情報屋の力だというのなら。
"裏世界"もまた、それに連携してないだろうか。
「お前さんは…どう考えてる?」
2組の視線は、俺に意見を求めているのではなく、まるで最終試験だとも言うべき、真剣さがあった。
俺はこの2人を見定めようとしていたけれど、見定められていたのは…俺の方だったのかもしれない。