シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
「………!!!」
脳裏に閃光が走った。
七瀬。
玲。
煌。
走馬燈のように駆け巡る。
少し前のことを思い出したんだ。
俺は――…
玲の心に沈んだことがあるじゃないか。
玲以外の…場所から。
その先にいたのは、煌と…声だけの七瀬。
違う道から、同じ場所に巡り合った。
エディターの心の…最下層に。
人の心は最下層で繋がっているという。
だからこそ、皆が出会えた。
人である限り、心がある限り…1つの輪となって繋がっている。
緋狭さんだって、自らの意識下から俺の処に来て、荒れていた俺を諫(いさ)めて裏世界へ行けと示唆したじゃないか。
思い出せ。
更にその奥にも続く道はあったこと。
玲の心でいえば、壁に覆われた部分。
俺に会いに来た緋狭さんは、俺の意識の覚醒間際…俺の深層部から伸びた"触手"に引っ張られて消えたのを覚えている。
"ふさふさ"だか、"わさわさ"だか…言っていたような記憶があるが、その時の緋狭さんの言葉は朧気にしか覚えていない。
………。
繋がっているのは…潜在意識下だけではないのか?
もしも――。
「答えが、判らないか?」
クマの声が聞こえてくる。
「もう少しだったのに…残念だな」
「そやな…」
2人の顔に浮かぶのは、落胆の色。
そして――失望の色。
ふと、親父を思い出す。
俺に失望して蔑んでいた…親父。
それは…12年前からだ。
そこから俺が幾ら変貌しても、俺に対する眼差しは緩和されることはなかった。
それどころか、俺が成長すると共に、親父の無茶な要求をやり遂げれば遂げる程…、俺を疎んじた眼差しに変わっていった。
俺は――
その目は決して忘れない。
俺に対する怒りか恨みか妬みか憐れみか…。
そうした感情を浴びたままでは終わらせたくない。
出来ない、やれないなどとは言いたくない。
俺の信条である"完璧主義"の根底にあるのは――
俺の意地であり、矜持だ。
やるからには徹底的にぬかりなく。
それは紫堂の血によるもののせいだけではない。
だから俺は言ったんだ。
親父にも似た面差しを持つ彼らに。
そこから導かれた答えを。
「裏世界は――
人であるなら"無意識"の下層レベルで共通できる…"普遍的無意識領域"と呼ばれる世界の…更に奥にある。厳重に防衛本能に護られている…危険な場所。
人の心の…最深層部にある」
と。