シンデレラに玻璃の星冠をⅢ
――"心"で力を制御しろ。
朱貴は言った。
――緋狭も言ったはずだ。強さは…心に比例すると。
緋狭さんの教えすら、朱貴は判っているのか。
朱貴の言葉は、何処か緋狭さんの教えに通ずるものがある。
――お前は1度、緋狭の金翅鳥(ガルーダ)を消した。その時の心は?
あれは横須賀港付近。
櫂を…早くゴールに行き着かせたくて。
櫂を殺したくなくて。
――お前は何度も芹霞を守った。その時の心は?
僕の命に変えても、芹霞を生かせたいと。
――ならば、その覚悟で…お前の色、電気の青色を変えずに、力を放て。
守りたい。
生かせたい。
――色を変えるな!! 力に翻弄されるな!!
――違う!! 自我を強めろ!! お前が死んだら誰が守るんだ!!
僕が死んだら…。
――もっと生きることに執着を見せろッッ!! "命"に頼るなッッ!!
生きること…。
――何度も言わせるな。"命"を削って死にたいのかッッ!? お前にとって、力にしたい"心"とは死ぬことか!!? 死にたいから力を使っているのか!!?
違う。
僕は…生きたい。
共に生きるために、守りたい為に…この力を使いたいんだ。
守りたいという"心"。
一緒に生きたいという"心"。
心だ…。
そう、その心が僕の力の糧となる。
――だから言っているだろうが、"心"で制御しろ!!
僕は…芹霞のくれた月長石のバングルに何度もキスを落して、
「あああああ!!!」
叫びながら力を全放出した。
"約束の地(カナン)"でのあの時のように、大切な者達と共に生きて共に進める未来を渇望して、そしてそれが実現できるという手応えすら感じたあの爽快感。
前に進みたい。
生きて進むための力が欲しい。
もっと、もっと!!
2ヶ月前、芹霞の命が止まった瞬間。
目の前で櫂が散った瞬間。
そして――
"約束の地(カナン)"の爆破。
少し前の桜の異変も、僕が居たのに状況を変えられなかった。
大切な人達が崩壊する様を、ただ眺めるだけの弱さは欲しくない。
生きたい。
僕の大好きな皆と僕は生きたい!!
だから、強くなりたい!!
限界を超えたいんだ!!